児童劇と富士山と青春!(あとがき)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

私(長澤)の感想です。

児童劇と富士山と青春!は、二十年以上前の作品です。
富士山はともかく、児童劇と青春は、今とは異なる世界観もあるように思えます。
時代の違いに物質的な違いもありますが、それは映像の進化または舞台の迫力、観ることで得られる感動は今とは違います。
そんな素朴な環境の中、児童劇と青春は、どんな意味があったのでしょうか?

生きていることは、何かをしなければならない。それが生きている価値であり、意味でもあります。
青春とは、「生きている価値を表現する」ことにあったと思います。
そして昔の青春は、若さの象徴(今しか出来ないこと)と思われていました。
今時代は、人生そのものが青春(高齢化社会の現象でしょうか?)との認識もあるように思えます。
ただ、若いころにしか出来ないと思うことは、「一生懸命出来る」ことでもあるようです。
一生懸命出来ることが青春であり、手段は演劇でも将棋でも、仕事や学業でも同じです。そして他人に評価され、得る物(お金や技術)があれば、励みになると言うことだと思います。
一生懸命出来ることは、勿論自分自身の生きる糧となり、必ず人生にプラスになることです。
長岡君の一生懸命が、人を集め運を呼び込み、一つの結果を出しました。
その手段が、児童劇だったと言うことです。

私自身このメンバーとは、長岡君以外はそれほど面識がある方ではありません。
浦部君も、同じ劇団の後輩でした。山本君、島田さん、木村さん、仲田さんは、お互い顔と名前は知っている程度です。津田さんと山野さんは、業界では私より先輩でしたので、仕事上多少交流はありました。
そしてこの年(平成七年頃)の夏、本文でもありますが、演劇教室の打ち上げに呼ばれたことがありました。
その時、メンバー全員と会いました。それも二十人以上の飲み会でしたので、あまり個人と話す機会はありませんでした。
今思えば、こうして作品制作を手伝ったことで、いろいろ興味も湧きます。ひとりひとり、劇団やまびことの出会いから想い、出来事など聞きたかった。
今では過去の事であり、昔話になってしまいます。やはり、その当時の話とは違い、脚色や忘れてしまう事もありそうです。

長岡君の目線、当然ですが作品作者の主観で話は進みます。客観的な状況や長岡君のいない場面でも、やはり長岡君の思考になっている。それが小説だと言えばそうなるかも知れません。
ただ、浦部君の目線や思考は、また違ったところにあります。他のメンバーも同じです。それを知りたいと思うこと自体、無理な話と言うことになるのでしょう。

劇団やまびこは、長岡君が立ち上げて動かした劇団ですが、実は、長岡君の意志はどこにもありません。
一言でいえば、成り行きと言えます。
出会いとしての運が、すべてを決めていました。
そういう意味では、長岡君は対人運に恵まれています。それは、長岡君自身の人柄がそうさせたとも言えます。
極めつけは、ちいちゃんとの出会いではないでしょうか?

私が思うに長岡君は、取り柄のない普通の人間ですが、一つだけ才能があったと言えます。
それは、「続ける才能」です。
努力が出来るとか、根性があるとか、精神力が強いとか、そう言う話ではありません。彼は諦めは悪い方ですが、どちらかと言えば三日坊主タイプです。
作品中その23、皆の気持ち、そして想い(その4)で、長岡君は手紙(辞退届?)を夜中、芸術劇場のポストに入れようとしていました。ところが、その日に稽古場で問題が起きて、皆も残っていました。そして長岡君の姿に皆の心が動き、一気に運を呼び込んだ。
ちょっと出来過ぎに思えますが、それも一つの続ける才能と言えます。それとも人柄?私から見ると、人柄が良いとは思えない。この時は、何か光るものがあったのでしょう。
最後に聞きました。
「ちいちゃんとは何者ですか?本当に見えたのですか?」
「ちいちゃんとは、劇団やまびこ自身そのものだったと思います。・・・・そう言うと、劇団の皆に申し訳ないかな?・・・・後は、読んで頂ける皆様が決めることだと思います」


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~今日の一言~

ここでの失敗は、やはり細切れに作品を出したことだと思いますが、ブログの枠組みを考えると仕方のないことだった。

児童劇と富士山と青春!(その38)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー劇団やまびことちいちゃんー (その5)

舞台もあらかた片付くと、掃除に入る。
長岡も、舞台上をモップを掛けて歩いていると、客席で、椅子に戯れて遊んでいる女の子が見えた。おや?ちいちゃんと思い。モップを掛ける手を休めて女の子を見た。一人で遊んでいる。女の子の近くに掃除のおばさんがいるが、気が付かないのか、無視しているのか、女の子も周りを気にしていない。
長岡が見ていると、女の子と目が合った。大きく手を振り、何とも言えない笑顔を見せた。長岡も思わず、小さく手を振り笑顔で応えた。
後から浦部が声を掛けてきた。
「長岡、何しているの?気でも狂ったか?・・・・早く終わらせようぜ」
「あ、あ~ん、そうだな、終わらせよう」
浦部と話して客席を振り返ると、女の子はいなくなっていた。掃除のおばさんも、何事も無かったように掃除している。
長岡がモップを戻して搬入口から外に出ると、陽射しの強さを感じた。おっ!と思い。道路まで出てみた。暖かな感触が、体いっぱいに降り注いだ。白い雲の隙間から見える青い空を仰ぎながら、「うん。そういうことかな」と自分自身に言い聞かせた。
ちいちゃんはやっぱり、自分自身の中にいる天使だったんだ。誰の心の中にでもいる、美しい心、正しい心の天使、それが俺のちいちゃんだったんだ。
搬出も終わり、搬出口の前に全員集まった。
長岡が、「お疲れ様でした」と言うと、皆も、「お疲れ様でした」と言った。どんな世界でも元気の良い挨拶は大切である。
長岡は、「まあ、何とか無事公演も終わり、営業的には県民文化の売り上げで、これからも劇団やまびこの活動が出来そうです。これからも一緒に頑張りましょう」と言うと、皆、青空の下で笑顔を浮かべた。
雨の雫が残り、光り輝いて見える三台の車に分乗して、富士市民会館を後にした。
陽射しの当たる搬入口、その陰から、ちいちゃんはヒョッコリと顔を出した。出発した車の後姿を見ながら、道路までピョコンと出て来た。
「あたしは、お兄ちゃんの心の中に存在する天使じゃないわ・・・・。希望を持って、これからも頑張ってネ。バイバイ」と笑顔で見送った。
フッと寂しそうな表情に変わり、立ち止まり、涙がこぼれた。
ハイエースを運転する長岡は、隣に座る津田さんに、
「養護施設の先生、生徒たちと一緒に帰りましたか?」と聞くと、
「ええ、帰る時に、楽しい劇有り難うございましたって言っていたわ。施設のバスが、時間に合わせて迎えに来ていたわ。変な心配事言って悪かったわ」と答えた。
長岡はホッとした表情を浮かべて、
「いえ、ノウ、プログラム(ノープロブレム)ですよ」
と冗談のつもりで言った。後ろから、「つまらんわ~」とか「白ける~寒い~」と皆に笑われた。
長岡は後ろに座る女の子たちに向かって、
「こんなぬいぐるみ劇でも、皆は大変な思いをしただろう。演劇は、自分たちは苦しむだけ・・・・。どう、もう嫌いになった」
とバックミラーで仲田を見た。
「え!?あたしに聞くの?いや、ハハ、ハハハハ」と照れながらも、「あたしは続けるよ。これからも、・・・・きつくて辛かったけど、何だか楽しいわ」と言う。
「貴方は楽しいかも知れないけれど、周りの私たちは大変だったのよ」
木村が意地悪そうに言った。
「何よ~。あたしはいつも、皆を助けているのよ」
「え~、本当に、いついつ、どの場面よ」
「も~、いつもよ」
と二人でからかい合った。島田は、
「本当は、ぬいぐるみ劇はちょっと、と思ったけど、普通の舞台と何も変わらないわ。お面被っていても表情出るもの、驚いたわ」
「でも、ぬいぐるみ劇はこれで終わりなんでしょう。長岡さん」
と山野が聞いた。
長岡は運転しながら首を傾げて、
「そうだね。当面は六月に一週間ほど、演劇教室(小学校中学校の講堂公演)やりたいね。皆は五月から稽古に入るよ」と言うと、後ろの四人は声を揃えて、「ハーイ」と答えた。
「その間、バイトしなければならないのね」
仲田の言葉に、長岡はフッと考え、
「もしかしたら、聖闘士4で何か稼げるかも?」
と言うと、皆は本当に白けてしまった。
島田は自分のバックから何かを取り出して、
「駄目よ長岡さん。悔しいけど、私たち何も出来ないわ。ダンスだけのグループよ。・・・・このカセットテープ聞かして」と長岡に手渡した。長岡はテープをデッキに入れながら、「何のテープ?」と聞くと、「ちょっと古いけど、ボイジャーよ、ユーミン」と言った。
「今回、甲府市のイベントが上手くいったからって、下手にお金かけて、聖闘士4でビジネスすると失敗するわ。本当に甲府ではラッキーだったんだから」と山野が言った。
「つまらないな~。せっかくスターになりかけたのに」と仲田が言うと、また皆で笑った。
「ハハハハそうだね。まだまだそんな時期ではないね。少し粘り強く、演劇教室で力を蓄えるのがいいのかなあ」
ハイエースが河口湖に出ると、助手席に座る津田さんが、「湖に富士山が映っているわ。美しいわネ」と感動して言った。
夕日のオレンジ色に染まった、大きな富士山が右手に見えた。河口湖にも水色に染まった富士山が映っている。
後で、島田がカセットの曲に合わせて口ずさんでいる。
「遠くで貴方が呼んでいる~両手を広げて待っている~私も目を閉じて答える~今全てが生まれたわ~」と何回か繰り返しある歌詞が、やたらと印象に残った。
青空と暖かな陽射しと広大な山脈の、清々しい姿。そんな大自然の中にいる和らいだ大きな気持ちを、明日につなげたいと考える長岡たちだった。

終わり。


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~今日の一言~

長々とお付き合いのほど、有り難うございました。
本当にお疲れ様でした。
長岡君も、少しでも多くの方に読んで頂いたことを感謝していると思います。
次回は、私(長澤)の感想(あとがき)を書きたいと思っています。

児童劇と富士山と青春!(その37)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー劇団やまびことちいちゃんー (その4)

「観れないの」ちいちゃんの言葉が頭に残った。
舞台では、小人たちの人形がハイホーハイホーと歌いながら、草原の挿絵から下手袖の小屋に消える。変わって人が入るぬいぐるみの小人たちが、一気にワーッと上手から出て来た。小さな舞台なので、七人の小人はより迫力あり、少ないお客でもドッと盛り上がった。
中央の座席に座っている養護施設を見てみると、一番端にいるはずの女の先生が見当たらない。暗くて分かりにくいが、座席は空席になっている。あれ?と思い、どこにもいない。視線を舞台に向けた瞬間!後ろから声を掛けられた。
「長岡さん、長岡さん有り難うございます。私、今日初めて、ぬいぐるみ劇の白雪姫観ました」
明らかに施設の先生だ!小さな低い声、ロビーで聞いた声と同じだ。・・・・どうして私の名前を?
長岡は振り向くことが出来なかった。また、金縛りだ。あの、ケヤキ公園のときと同じだ。恐怖感がそうさせるのか?
冷や汗が流れ落ちる。舞台は淡々と進んでいる。
「どうして、どうしてなんですか?僕たちとどんな関係が・・・・」
と聞くと、女の先生は、
「理由は、長岡さんが考えている通りです。どんなに小さなことでも、心にわだかまりとして残っていることがあれば、忘れることが出来ないのです。特に子供のころの想いは、人々の心や時空を超えるのではないでしょうか」
と囁いた。
次の瞬間、暖かく柔らかい小さな腕が肩に回った。
「ちいちゃんは、白雪姫観れて良かった。ここに来たいと思っていた。お兄ちゃんを信じて良かった」
尚も長岡の腕に手を回し、ピョンピョンと飛び跳ねて甘えた。
「一緒に白雪姫観よう。舞台では、お兄ちゃんの友達が一生懸命演技しているんだ」
会場いっぱいのお客が盛り上がる中、小人たちは自由に元気良く飛び跳ねる。
新しい会館で、時代を越えて劇団やまびこは公演している。長岡は、ちいちゃんの小さな手を握り、震える声を隠しながら、
「皆、皆、ちいちゃんのために頑張ってくれている」と言った。
「お兄ちゃんのお友達は、みんな大好き!ちいちゃんも、お兄ちゃんのお友達なのネ・・・・」
長岡は、笑みを浮かべて頷いた。
「劇団やまびこは、ちいちゃんのおかげで出来た、素晴らしい仲間たちなんだ」
フッと、ちいちゃんの声が女性の声に変わり、
「劇団やまびこはいつまでも、千鶴の心の中にあるのね」
長岡は、ずいぶん大人びたことを言う子だなあと思った。後を振り返ることが出来た。・・・・ちいちゃんの姿は無かった。
!?前の座席を見ると、一番端に女の先生は座っていた。
今の出来事はどこまでが本当で、どこから夢なのか?分からなかった。すでに恐怖は何も感じなかった。
暫くすると休憩時間になった。頭の中をハッキリさせて、不安ながらも客席を下りて女の先生に挨拶すると、先生は何事も無かったように見えた。
「今日は、本当に有り難うございました。生徒たちも大変喜んでいます」と言った。
とても三十年後のちいちゃんとは思えない。長岡は頭を下げてロビーに出た。
蛍光灯の明かりだけの暗いロビーでは、数人のお客を前に、津田さんがプログラムを売っている。閑散としたロビーを歩いて、ウインドガラスの向こうの黒い空を見上げると、ひたすら濁った雨が強く窓ガラスを叩き、水しぶきを上げている。
会場に戻ると、客席の雰囲気も暗く、とても一幕を見た後の空気とは思えない。何か蒸し暑さだけが感じられ、外の暗さと同じように、やる気が伝わってこなかった。舞台もお客も同じだ。今日という日が、そういう日なのか?長岡だけがそう感じているのか?
客席からは小さな囁き声は聞こえるものの、シ~ンと静まり返った、白けた空気が漂っていた。
養護施設の座席を見ると、女の先生が座っていた席は空席だった。先生は一人だけなのに、二十人もの生徒を置いて歩き回るはずがない。本ベルが鳴り、客電が落ちると長岡は、下手横の通路の扉に体を預けて、二幕が始まるのを見ていた。
エンディング前の舞台裏はパニック状態だ。長岡は裏に回り、下手袖から皆の集中している姿を見ていた。浦部は、体中汗と埃で真っ黒になりながらバトンの綱を引いていた。
「長岡、手伝いに来たのか?ロビーが暇なら搬出まで手伝ってくれ!」
何となく、言われるがままにエンディングから終演、搬出と、皆と一緒に動いた。
会場にお客がいなくなると、緞帳を上げて舞台を広くして、搬出作業に取り掛かった。
ロビーでは津田が、残件整理や物品の後片付けをしている。フッと窓ガラスから光線のような陽射しが、プログラムの白雪姫に差し込んだ。津田がプログラムに手を触れた時、暖かな感触がした。
「あら!?陽が差し込んで来たわ。晴れたのね」
とウインドガラスから空を見上げた。
白い流れ雲から青空が少しだけ覗き、暖かな陽射しが、ウインドガラスから斜めに差し込んでいた。

続く。


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~今日の一言~

これが終わったら何を書きましょうか?別に期待されていませんが。
そうだ!あれにしょう。でもしかし、書いて大丈夫か?
問題は書き方でしょうね。

児童劇と富士山と青春!(その36)


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ー劇団やまびことちいちゃんー (その3)

長岡はウインドガラスの手前まで行き、
「今は交通も便利だと思います。路線バス一本で来られるのでは?」
「そうかしら。それに養護施設の場合、生徒二十人に先生一人では危険すぎるし、そんな引率、普通ないわ」
「生徒たちを見ると、車椅子の子供や一人では何もできないほど、重症の生徒はいないみたいです。症状が軽度の子供ばかりで手間がかからないから、」
と言いかけると、津田は長岡の言葉を遮り、「分かりました」と言い、不満そうな表情を見せた。
暫くすると一ベルが鳴り、トランシーバーに受信音が入る。
「長岡、ロビーのお客は捌けたか?」
浦部は、下手袖から入りの悪い客席を見回して悪口を言った。長岡は、
「お前、分かっているだろう。前売り五十二枚、当日売り八枚、招待三十四枚だ。全部で九十四人、売上合計十万八千円だ。ハハハハ参ったか」とやけくそに言った。
「悪い悪い。でも九十四人か、・・・・しょうがないね。皆も昨日で全て出し切ったって言うのか、疲れが出て調子が悪そうだ」
長岡はトランシーバーを持ち換えて、
「お前らそれでもプロか、俺は昨日と今日、同じギャラ払うんだぞ!少しはピシッとしろよ、ピシッと」
「ごめんごめん。あまりにも落差がありすぎて・・・・。まあ、ロビーが暇なら舞台でも観てろよ。昨日は観てないだろう」
「ああ、そうだな。もう浦部の白雪姫は観られないよな、価値あるよ」
と言ってトランシーバーをOFFにした。
ロビーは津田さんに任せて、本ベル前に一番後の座席に座った。百人足らずのお客が千席ある座席の中央に集まっていた。
余裕のある空間に、長岡は体を伸ばし、この興行の失敗を振り返った。以前には、この程度の入りは何度も経験している。責任はあるが、それが自分に降りかかることは無かった。今回は、興行がそのまま自分に降りかかる。でも、甲府市の成功が今日の失敗を消している。気持ちに余裕があるものの、何か引っかかる。それは当然、富士市での動機である。
富士市での公演は何も意味がなかった。あれだけ浦部や津田さん、皆に迷惑かけてまで公演したのは、勿論、奇跡を信じて、幻の養護施設とちいちゃんの幻想だった。前の方に座っている養護施設の女の先生と生徒たちは、勘違い以外の何ものでもない。勿論奇跡など、小説や映画の中だけの話だ。・・・・ただ、現実に無いものを信じたい。と思いながらも養護施設の生徒を見ていると、津田さんが言うように不思議な空気は感じる。お互い話もしないし笑いもしない。ただ、緞帳の閉まった舞台を見つめているように見える?女の先生も、一番端でジッと座って動かない・・・・。まさか、そんなこと無いよ。
本ベルが鳴り、客電が落ちオープニングの音楽が流れた。緞帳が上がると、客席が静かなせいか、だんだん瞼が重くなり、ゆったりとした座席の中に体が沈んで行くのが分かる。
長岡の周りにはお客がいないはずだが、耳元で話し声が聞こえる。
「家の子供にも見せてあげたいけど、なかなか子供向けの劇は観る機会ないのよ」
「そうね。富士市に来るのは、年に一、二回かしら・・・・今回は白雪姫よ」
「これだけ会場いっぱいお客も入れば、なかなか座席券も取れないものだわ」
「なにせ、富士市の新しい会館だもの。今までの富士吉原会館じゃ・・・・」
長岡は、この人たちは、いったい何を話しているのか?こんな殺風景な会場にと思って、フッと目を開けると、いつの間にか客席はいっぱいになっていた。
たくさんのお客が期待するざわめきの中で、ぬいぐるみ劇が始まった。
今は、昭和四十一年四月。富士市に、新しい照明設備の付いた文化会館。こけら落としで、劇団やまびこが真っ先に公演していた。
長岡はビックリして、会場全体を見渡した。お客の熱気を肌で感じ、ボー然としていると、後の通路にス~ッと女の子が立ち止まった。
一瞬ゾクッとしたが、振り向かなくても誰だか分かった。長岡は舞台を観ながら、
「ちいちゃん、約束は守ったぞ。お兄ちゃんは本当に苦しい思いをして、この文化会館で白雪姫の公演を実現させた」
と言ったが、会場の盛り上がりの中、ちいちゃんの声はかき消された。
聞こえないと思った瞬間、小さな腕が肩から首に回り、耳元で、子供の声だが低い声で、
「ちいちゃん嬉しい。約束守ってくれた。でも、・・・・でも、でもちいちゃんは白雪姫観ることが出来ないの」
と悲しそうに告げた。長岡は、自分の肩にある小さな腕を、そっと撫でた。
「何言っているんだ。今、目の前に白雪姫いるじゃないか、もうじき、ちいちゃんの大好きな小人も出て来るよ」
ちいちゃんは、長岡の肩に抱きつき甘えながら、
「でも、でも、ちいちゃんは観れないの。観れないの」
と泣き出して言った。長岡は、小さな手を握りながら目を潤ませた。舞台が見えなくなり、暫く意識の無い時間があった。
ハッと目が覚めると、今いるのは古い市民会館だった。少ないお客の囁きが耳についた。
夢なのかと思った。

続く。


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~今日の一言~

今週末から天気が悪くなるそうな。じめじめうっとうしい季節でもないのに。
うっとうしいのは選挙だけにしてくれ!秋晴れの日々が待ち遠しい。

児童劇と富士山と青春!(その35)


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ー劇団やまびことちいちゃんー (その2)

ロビーの仕込みも終わると、津田さんは物品販売の椅子に座り、プログラムを見たり会館案内(小紙)を見ながら時間を潰している。長岡は受付に座り、ボンヤリとお客が来るのを待ちながら外を眺めていた。
舞台上では浦部を中心に、小人の小屋の隠し方や十五尺パネルの転換、そして小道具の確認。役者やスタッフが本番中スムーズに動けるかを悩みながら仕込みを進めていた。
外の雨足も強くなり、皆の気持ちも暗くなる。会館内の湿度も下がらない。止まらない汗と埃で身体も汚れる。一生懸命動いているが、皆の能率は一向に上がらない。だらだらとした雰囲気が強く、県民文化のような活気はなかった。
長岡は十二時になると、ロビーに届いていた、お昼の弁当を持って楽屋に行った。やはり昨日のような感動や活気はない。これは天候の悪さや客の入り、古い会館の雰囲気と本番二日目など、全てが関係している。しかし、この重苦しさには辛いものがあった。
楽屋の入り口で、「お昼だよ。皆で好きな物食べてね」と言って、ドアの横にお弁当を置いた。
ロビーに帰る途中、下手袖を通ると浦部と山本がPA席にいた。
浦部は長岡に気づくと、「今日は時間に余裕があるな?」と言った。
長岡は渋そうな顔をして、首を横に振った。
「弁当楽屋に置いて来た。早く済ませろよ。・・・・皆元気がない。今日の雨空と同じだ」
「う~ん。昨日が良すぎたので、疲れがどっと出たのかなあ~」
浦部が言うと、長岡は腕組をした。
「聖闘士4もいつもはもっと元気なのに。・・・・表情の無い人形みたいだった」
浦部は胡座に座り直して、下から見上げた。
「聖闘士4も、人気があるのは甲府市だけだからね。ここ富士市では、ただのぬいぐるみ役者だよ」
三人は軽く笑った。山本は揃えた両足に腕を回して、
「本番二日目のジンクスではないでしょうか?」
と真顔になった。長岡は首を振りながら、「どうかねえ。分からない分からない」と言いながら、ロビーの方に行った。
受付では津田さんが、お客と話していた。近づいてみると、一般のお客ではなさそうだ。
「津田さんどうしました。お客ですか?」
と聞くと、津田さんは振り向き、
「あ、ご招待のお客よ。それも引率で二十名ほど」
と言った。団体の招待は受けていないはず。
少し小柄で、地味な服装にショートカットの四十くらいの女の人だ。
「保母は私しかいません。後は全員施設の生徒です」
と小さな声で言った。長岡は、
「団体の招待は聞いていませんが、どこの団体でしょうか?」
と聞くと、女の先生は尚も小さな声で、
「富士宮市の・・・・養護施設です。富士宮市役所の方から今回の公演を聞いて、二カ月前には決まっていたと思いますが・・・・」
と長岡の顔を少し遠目に見て、答えた。
長岡は驚いた。
施設の名前は聞き取れなかったが、問題の引率施設が富士市内だと決めつけていた、・・・・二カ月前なら時期も同じだ。問題の養護施設は、この団体だったんだ。
養護施設の話は本当の話で、何かを期待した自分がおかしかったんだ。やはり、富士市で奇跡は起こらない。単なる失敗した赤字公演でしかなかった。
長岡は椅子に座り、言葉が出ない・・・・。
「何か、間違いでもあったのでしょうか?私たち遠くから来ていますので、もし間違いなら座席券買いますけど・・・・」
女の先生は、小さな声だがはっきりした口調でそう答えた。
長岡はハッとして、女の先生を見上げた。
「いえ、結構です。今日は座席に余裕がありますので、招待客を待っていたぐらいですから、・・・・どうぞお入り下さい」
女の先生は、ホッと表情を変えて笑みを浮かべ、「有り難うございます」と言って頭を下げた。そして施設の生徒たちの傘をビニール袋に入れて、受付の前を通りロビーの隅に並ばせた。
「一般のお客が、外で傘さして待っているわよ。・・・・一時十分、開場した方がいいんじゃない」
と津田さんに急かされた。
三十人くらいのお客を入れると、受付には誰もいなくなった。緞帳はまだ下ろせないので、ロビーで待つことになる。
「あの養護施設の子供たち、いったいどうやって富士宮から来たのかしら。園バスは、駐車場に見えないわ」
津田さんは、不思議そうな顔をした。雨の降り頻る駐車場を見ると、乗用車が十台くらい止まっているが園バスは無かった。

続く。


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~今日の一言~

この章に関しては、いろいろな人がいろいろな意見を言っていた記憶がある。
読み手によって、感想がこれほど変わるのも面白いことだ。

児童劇と富士山と青春!(その34)


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ー劇団やまびことちいちゃんー

長岡は一人部屋に入って、ベットにゴロッと仰向けに寝た。今日一日の出来事が何回も回想された。午後四時頃、富士市民に電話掛けた時には前売り五十二枚しか出ていない。当日売りも期待できる材料など何もない。それだけに、甲府市の成功は本当に命拾いだった・・・・。
四階の窓のカーテンを広げると、富士市独特の夜景が広がる。赤と白の煙突から、もくもくと白い煙いが暗い空へと広がり、消えて行く。
そんな光景を見ながら、想い浮かべる。富士市でのぬいぐるみ公演の意味とは、ちいちゃんはどんな形で出現するのか?自分とは本当に関係あるのか?ぬいぐるみ劇や白雪姫などには何も結びつかない。それならなぜ、俺たちは富士市で公演するのか?ちいちゃんは、養護施設の引率は、自分が見た夢の一件はいったい何だったんだろうか?
長岡は、富士市の遠い夜景を眺めながら想いを巡らせていた。
翌朝、長岡は少し早めにロビーに下りて行く。すでに数人の役者たちがソファーに腰かけて雑談していた。長岡は「おはよう」と挨拶して外を見た。
ロビーから見える外の景色は、空一面に厚い雲が広がり今にも雨が降りだしそうな雲行き。国道沿いなのか車の往来が激しく、粉塵が舞い上がる中を、子供たちも身をかがめながら歩いている。
何となく、気の乗らない不安な空気を感じさせる朝だった。
「嵐が来るって、朝の天気予報で言っていたわ」
振り向くと、津田さんが心配そうにウインドガラスから空模様を眺めていた。
「雨が降ると、当日売りに響くわね」
「ええ、でも天気が良くても三十人くらいしか来ません」
「前売りは幾らくらい捌けたの?」
「五十二枚です。・・・・金額にして九万円です。会館費用も出ません」
「キャパは千席ぐらいよね。・・・・でもそれは、初めから分かっていた事よ」
津田は慰めるように言った。
皆はぞろぞろとロビーに集まり出して来た。さほど広くないロビーがいっぱいになると、浦部は仕込みのミーティングを始めた。
雨の降りそうな曇り空の下で、三台の車に分乗してビジネスホテルを出発した。
九時前には搬入口の前で、皆はそれぞれに気持ちを引き締めた。
「全然イメージが違うよ」
浦部は建物を前にして、長岡にそう言った。
「どんな風に違う」
「随分古くなったような、使いづらそうな感じがする・・・・。勿論、時間的な古さじゃない」
「新しい小屋(会館)がたくさん出来たからだよ。ここにも(富士市)ロゼシアターみたいな凄い会館あるし」
「そういうことかなあ~。そういえば飛行船、今日ロゼシアターであると聞いたが?」
その時、搬入口の古い扉が、ギギ~ッと鈍い音を響かせて開いた。
小屋付きの人が顔を出すと、皆は、「おはようございます」とこの時ばかりは元気良く挨拶した。
二回目の仕込みということもあり、搬入はスムーズに進んだ。浦部と長岡二人で、搬入口の錆びついた扉を閉めると、黒い雨雲からポツリポツリと雨が降り出して来た。
「搬入だけはぎりぎり間に合ったな」
「搬入だけだな。・・・・しかし小屋の中は暑いな、汗ばかり出て来る」
「うん。湿気が多いね、気温も二十度越えているな」
長岡は、腕の袖で汗を拭いながら舞台を見た。荷物と作業している人たちで雑然としている。広さがなく、思った以上に狭く感じた。
「狭いなあ~。間口もそうだが、奥行きが全然ない」
「間口は十間で問題ないが、奥行きは五間で少し足りないかな」
「吊り換えとか、小屋を隠す作業が大変じゃないのか?」
「いや、逆にバトンは多い。吊り換えは休憩時間の一回で済むし、小屋の移動も前後だけだから、昨日よりも楽は楽だ。だいたいが古い作品なので、このくらいの会館に対応してあるんだ」
浦部は、余裕のある表情で言った。
長岡は搬入が終わると、座席券や文具の入った鞄を持って、客席の中を通ってロビーに行った。あまり広くないロビーから、雨雲が良く見えた。蛍光灯みたいな電灯が暗いロビーに、異様な雰囲気を演出している。
物品販売のセッティングをしている津田は、長岡を見て、
「昨日と違って狭いわね。・・・・改めて座席表見たけど、昨日と違う意味で大変ね」
「ええ、自分の努力の無さに泣きたくなります。津田さんに県民文化を紹介して貰えなければ、劇団やまびこの明日はありませんでした」
座席券を机に並べていると、ポツリポツリと雨音が聞こえる。フッとウインドガラスを見上げると、雨が強くなり、跳ね上がっているのが分かる。色も、少し濁った黒い雨に見えた。
「ずいぶん強くなってきましたね」
「そうよ。春の嵐が来るのよ」
津田さんは一人で笑った。

続く。


~初心者(大人)女性子供将棋教室~

2017年季節は秋、心身とも充実した季節になります。
この時期こそ、新しいことにチャレンジしてみませんか?

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お問い合わせ 03-3737-0588

~今日の一言~

この作品も最後の章に入りました。
もう少しの辛抱です。
やはり、将棋の枠内に入れるのは無理があったか?

児童劇と富士山と青春!(その33)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー緞帳が上がる、その瞬間ー (その4)

強い陽射しが黒いウインドガラスを通して、心地良い暖かさに変えている。ロビーでは、津田さんの使っている電卓の音がピッピッピッピッと響くほど静かで、休憩時間の人混みが嘘のように落ち着きを取り戻している。
一転して舞台上では、二千五百人のお客を前にし緊張の連続だった。この辺りまで来ると、役者スタッフと緊張感よりも集中力が上回り、雑念の無い動きになる。
今、森の中で白雪姫が、小人たちの手で棺に入れられた。すると王子様が現れ、小人たちと悲しみを分かち合う。
浦部は進行表を確認して、綱元へ戻った。
「ラスト前、転換行くよ」
と言いながら三バトンを下ろすと、スタッフが最後のドロップを吊り換えて、フィナーレの舞台準備に取り掛かった。
静かなロビーでは、物品売り場で下を向いて計算している津田に、「どうぞ、少し休んで下さい」と言って、自販機のカップコーヒーを机の上に置いた。津田は顔を上げて、「あ、有り難う」と言って一口すすった。
一息ついて津田は、「ぬいぐるみはロビーに出すの?」と長岡に聞いた。
終演後、役者がお客に挨拶することを、送り出しと言う。ぬいぐるみがロビーまで出て来ると子供たちは大変喜ぶ。しかし今回は、小人や聖闘士4の人気も大きいし二千五百人のお客に対して、ロビースタッフ二人では危険すぎる。
長岡は、「今回は出来ませんね。怪我人が出たら最後ですから」
「この入りだと、何があっても可笑しくないわね。・・・・私は物品売り場に?」
「ええ、お願いします」
長岡が客席の方に行きかけると、津田は少し大きな声で、「長岡さんは搬出手伝うの?」と聞いた。
「そうですね。五時までには出ないといけないし、男手は必要だと思います」
客席に入ると舞台では、大音響と共に白雪姫のフィナーレを迎えていた。お客の拍手が大きく響いた。感謝の気持ちで言葉も出ない。
拍手と共にゆっくりと緞帳が下りる。舞台上では役者たち全員横一列に並び、緞帳は再び上がった。もう一度大きな拍手に迎えられた。アンコールだ。役者たちは手を振り頭を下げた。やがて客席の明かりが強くなり、緞帳が再び下りた。
長岡は会場の扉を開けて回り、お客が出て来るのを待った。少し経つと、帰り支度の終わったお客がぞろぞろと出て来た。表情を見ると笑顔で満足そうだ。お客の中には、「今日は楽しかったわ。有り難う」と言ってくれる人もいた。この時ほど、演劇をやっていて本当に良かったと思い、また目頭が熱くなった。
緞帳の下りた舞台上では、役者たちがズラを外して放心状態になっていた。
浦部は、「ケツナシ逃げるよ(会場の貸し切り時間が無いので、搬出を急ぐ)」と怒鳴った。
皆は舞台の余韻も持てないまま、搬出作業に取り掛かった。舞台がある程度片付くと、荷物をトラックに積み込んだ。
外に出ると、暗い舞台と違い夕方でも眩しさを感じる。皆は改めて一息ついたのか、そこらに座って自由に休んでいる。長岡と津田も裏に来て、「さあ、出発するか!早く富士市に行って明日に備えよう」と長岡が言うと、皆はトラック、コースター、ハイエースに乗り込んだ。
まだ、陽射しが温かい五時前の気持ち良い風を受けながら、三台の車は甲府市を後にして富士市に向かった。
長岡が以前営業で、富士市から甲府市に向かった逆のコースになり、ちょうど富士山の前を横切るコースにもなる。
「今日は天気が良いから、富士山の前を通る頃、夕焼けが富士山の雪の部分と重なり合い、銀色に浮き上がる光景が見ものだよ」
長岡は、同じハイエースに乗っている津田や聖闘士4に言った。
暫く走り、前に立ち寄った富士の麓に着いて、少し休憩することにした。ちょうど青空と夕焼けのバランスが良く、富士山が美しく壮大に見える。車から降りると、あまりにも広い、広い大自然を前にしてボ~ゼンと立ちすくむ。都会の小さな事を全て忘れて、思いっきり何かを発散させたくなる。皆は童心に戻ったみたいに、広い原野で走り出したり飛び跳ねたりと、はしゃぎ回った。
長岡と津田は皆の元気な姿を眺め、心穏やかになる。
「以前ここに来た時、あの局長の撮った写真が、・・・・銀色に写る富士山が見えたんですが、今日は少し靄がかかっているし、銀色には見えませんね」と富士山を前にして言った。
「あの写真は冬だけのものよ。多分、空気中の粒子の関係だと思うわ。銀色の富士山は冬場だけの風物詩、限定品よ」と津田さんは言って笑った。
「冬場だけの限定品かあ、貴重品ですね。・・・・でも今見える、春の富士山、壮大さは変わりませんね」
「皆、初舞台は相当緊張してたのかな?物凄い解放感だわ」
「あれだけ重労働の舞台が終わって直ぐなのに・・・・若さなのかな?」
二人が笑いながら呆れていると、
「長岡さ~ん、津田さ~ん。富士山をバックに、みんなで写真撮りましょう」
と木村が近づいて来た。
青空の中に広がる大平原、富士山が大きくそびえ、夕焼けが山々をオレンジ色に彩っている。それをバックに、皆で何枚か記念写真を撮った。
長岡は、運転しながら今日一日を振り返った。成功は奇跡に近かった。もしかしたら、明日の富士市民も期待が持てるかも。・・・・あの夢の中の、ちいちゃんが現れて何かが起こる、そんな気がしてならない。
明日はロゼシアターで飛行船も公演する。しかし、何か神がかり的な思いもある。劇団やまびこは、ちいちゃんに、何か魂でも与えられたような力があるのだと。明日の公演で何かが起こる、そう信じて疑わない。
三台の車がビジネスホテルに着いたのは、八時も大分回った頃だった。長岡は皆に、明日の出発は七時半だと伝えて、解散した。

続く。


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~今日の一言~

長岡君の私記には影響されるなあ。
私も何か、長いやつ書いてみようかなあ。

児童劇と富士山と青春!(その32)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー緞帳が上がる、その瞬間!ー (その3)

ロビーはお客も捌け、だいぶ落ち着きも取り戻した。フリーになっているトランシーバーからは、舞台裏の声が聞こえてくる。
津田が、「凄いわ。一階二階と二千人以上入ったかしら」と言うと長岡も、「最後の集計が楽しみですね」と答える。
とホッと一息ついて、椅子に座り直した。この時、机の上には残件が数百枚程度に減り、下の箱には千円札中心に、メチャクチャに詰め込まれていた。
長岡は、椅子に寄りかかり暫く放心状態になる。目が掠れて周りがぼやけて見え、頭を下げて、フッと脳裏に光を感じた。今回の公演が成功したことで、劇団の存続が決定したのだと感じた一瞬でもあった。
その時、頭の中に雷が落ちたようにリリリリリリリッと本ベルが鳴った。
「津田さん、窓口お願いします」
長岡は本ベルが鳴り終える前にと、広いロビーを走り扉を引いて会場の中に入った。
全体を見回すと、今、客電が少しずつ落ち、暗くなり、会場のざわめきも小さくなっていく。一瞬、完全暗転になる。
長岡はどうしても、この瞬間を見逃す訳にはいかなかった。
緞帳裏の舞台上では、板付きした役者たちに緊張感が走る。下手袖には浦部が、PAには山本が、上手袖に聖闘士4、皆本ベルが鳴り止むのを待っている。本ベルが鳴り終わると直ぐに音先行で始まる。
幕開けの曲が流れて緞帳が上がる瞬間、何もない何も見えない空間が出来ると、幕開きの音楽がオーケストラと共に会場全体に響き渡り、緞帳の上がって行く隙間から強い光線がサーッと広がると、会場の子供たちがワーッと盛り上がった。
緞帳が上がり終えるのを見届けると、・・・・長岡はフッと、涙がこぼれそうになる。
芸術劇場に飛び込み、嘘を並べて出来もしない約束をして、泣き顔に笑みを浮かべ、雨に打たれながらの営業では何度も辞めようかと思った。どんなことがあっても、いつも皆の顔が、元気な笑顔が俺を支えてくれる。皆が頑張っているからこそ幕が開けられたと、長岡はこの時ほど友情というもの、人間は独りでは生きていけないと実感した。
緞帳は全開しオープニングの音楽も終わり、一幕一景、王宮の場面に入った。
これから、この一つ一つの演技が劇団やまびこの歴史を創って行く。長岡は今一瞬、回想に走ったが、まだまだ振り返る時期ではない。頑張れ浦部、頑張れ皆と思いながら窓口に戻った。
津田は、山積みになっている半券を整理しながら、チラッと長岡の顔を覗いた。
「どうだった。劇団やまびこの初演の姿は?・・・・皆大丈夫だった」
「ええ、大丈夫です。皆元気な姿で舞台にいます」
と長岡は答え、机の上に乱雑になっている残券整理に取り掛かった。
舞台では二景も終わりに近づき、今、白雪姫が小人の小屋を見つけた場面だ。
この作品では、小人七人のぬいぐるみ製作が一つのポイントとして上げられる。大人が入るぬいぐるみで、如何に小人らしく作るかが問題であった。実際には、頭を大きく身体を横太りに、足を短く作ることによって小人らしく出来上がった。
浦部は下手袖から三景に備えて、皆に指示を出してから綱元に行った。暗転になり、二バトンを上げて三バトンを下ろし、ドロップを付け替える。中割れ式の小屋を回転させて、お后の部屋から小人の小屋に換え、小道具も揃える。次に十五尺パネルを用意して・・・・。舞台裏は徐々に忙しくなり、他の役者やスタッフも走り回る。
混乱の中、ようやく舞台も整い、小人に入った役者たちが舞台に出て行くと、会場はどよめきや小さな笑いの渦がいくつも出来た。
浦部は、下手袖から会場の反応を感じ取ると、「これからだよ。これから彼女たちの本当の実力が出るのだ。稽古のなせる技だぜ」と独り言を言った。
浦部は進行表を見ながら三バトンの裏に行き、上手袖にいるスタッフたちと、お后の部屋の仕込みを始めた。舞台では小人の小屋の周りで、白雪姫と小人たちの演技が続いている。
浦部たちは、表舞台の演技や客席の反応をドロップ一枚隔てた真裏で聞きながら、息を殺して静かにしかも敏速に、時間と戦っている。
「ヒ~ヒヒヒ、白雪姫もこれまでよ」
一幕最後の毒林檎を作るお后の姿に、テープの台詞が重なり、暗い音楽が流れて緞帳が静かに下りた。
ロビーでは、売り上げの整理を終えた二人が、休憩中に販売する物品売り場を設置して、休憩時間に備えた。
長岡は一幕終演後のお客の反応が気になり、会場の雰囲気を確かめに中に入った。
満員に膨れ上がった会場を何回見回しても、改めて目頭が熱くなる思いがした。
急いでロビーに戻り、今度は津田さんの手伝いをする。物品売り場では、たくさんの人だかりが出来て、津田さん一人では大変そうだった。
楽屋では、役者スタッフと一幕を終えて疲れ切っているが、何とかやり終えた安堵感の空気がある。上隅にあるモニター画面には、緞帳の下りた舞台が映り、会場のざわめきが聞こえてくる。
二ベルが鳴り、音楽先行で二幕の緞帳が上がった。
浦部は袖から、小学生も多い客席を眺め、「これは、小人の人気よりも聖闘士4の人気かな?」と思った。
舞台では、小人たちが踊りを楽しみながら、自由で軽快な演技を見せて、客席を尚も盛り上げている。

続く。


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~今日の一言~

我慢すること、行動すること、両方とも大切なことですが結果は異なります。
改めて、時間の使い方は難しいことだと感じます。

児童劇と富士山と青春!(その31)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー緞帳が上がる、その瞬間!ー (その2)

ロビーの事務所横にある時計を見ると、十二時になろうとしていた。まだ、お客が来るには少し早い感じもする。都心にある会館ならお客の出足も早いが、ここは地方の会館なのか、お昼を済ましてから来るのだろう。
まだ、開演まで二時間ある。
長岡はトランシーバーで浦部を呼び、舞台の進行状況を尋ねた。
「あ~長岡か、しんどいけど何とかなりそうだ。今、明かり合わせに入っている。舞台が使えない状態だが、それが終われば転換稽古に入る。僕は綱元にいる。・・・・、それ!第二バトンアップだ。よいしょと。・・・・何か用か?」
「皆の弁当来ているんだか、どうするよ」
「昼飯か。・・・・あと三十分くらいかな、そしたら楽屋に持って来てくれ。そ~れと!・・・・次は第三バトンだ」
浦部は、突然大きな声で、
「そのパネルは一人で動かしたら駄目だよ!倒れるぞ。・・・・十五尺パネルは必ず二人ね。分かった!」と怒鳴った。
長岡には、「本当に素人ばかりで心配だよ。もう一度、しっかりミーティングやらないと駄目だな・・・・長岡、本番中もし僕が倒れたら後は任せるぞ」と冗談を言う余裕もあった。
ロビーには、そろそろお客が集まり出していた。小さな男の子が走り回っていたり、雑談などが聞こえて来たりと賑やかになってきた。
津田さんが、ロビーの混み具合を見て、
「十二時三十分よ。チケットだけでも売ったら?」と言うと長岡は頷いた。
そしてロビーのお客に向かって、
「今から、座席券を持っていない方に販売致します。入場はもう暫くお待ち下さい。割引券お持ちの方と、当日券お求めのお方だけ、受付にお並び下さい」
と言うと、思い思いのお客が受付に並び始めた。津田も長岡のフォローにと隣に座り、対応にあたる。
開演一時間前の午後一時には、広いロビーに入場を待つお客でいっぱいになった。
長岡は、「ロビーはいっぱいだ。そろそろ客席を開場したいが、まだか無理か?」と浦部にトランシーバーで伝えた。
「もう少しだ。もう少しで照明も終わる、あと十分待ってくれ・・・・緞帳下りたら、こちらから連絡する」
「分かった。出来るだけ早くしてくれ」
ロビーが段々と混み合い、外にも人が増えて行く状況に、長岡は心配になった。
照明の明かり合わせは、サス、SS、ローホリ、フロントと進み、最後にシーリングを合わせて終わった。
「浦部さ~ん。照明終わりました~。遅れてすみませ~ん」と照明係の技師は、下手袖奥の浦部に向かって叫んだ。
仕込み作業は全て終了した。
「小屋付さんOKです。緞帳お願い致します」と浦部は指示した。緞帳が下りるのを舞台中から見届けて、山本に「客入れOK」と伝えた。白雪姫のテーマ曲が会場全体に小さな音楽で流れ出す。
お客は、大ホールの前に三百人以上膨れ上がっていた。
「半券切りますので、親御様が券をまとめて持っていて下さ~い。半券切りま~す」
津田は雑然とした中、声を張り上げた。何回大きな声で叫んでも、なかなか全体には伝わらない。
長岡がチラッと時計を見ると一時三十分になっていた。
白雪姫のテーマ曲が流れる客席は、徐々にお客が入って騒がしくなる。布切れ一枚向こうの、緞帳の下りた舞台中にも聞こえてくる。
舞台では、転換稽古や場ミリ、役者の動きや位置関係の練習に集中していた。広い舞台は、役者とお客との主観や距離感覚を合わせるのが難しい。
開演十分前になると、何とか窓口も捌けて余裕も出て来た。会場は八割ほどのお客で埋まっていた。
浦部は下手袖にあるモニターで客席を見回し、
「これだけ広い会場で二階までいっぱいだよ。長岡もなかなかやるなアハハハハ」
と独り言を言って、
「なんだか、もう疲れたよ~。あと緊張感で体がだるいよ。今にも倒れそうだ」
と近くにいる、PA(音響)でスタンバイを待つ山本に声を掛けた。
「僕もだるいです。出来れば誰かに代わってもらいたいですね」
と山本は時計を見て、
「そろそろ時間ですね。五分前です」
浦部はニッコリ笑い、小さく頷いて、下手袖横にある赤いボタンを見た。
トランシーバーをフル状態にした。
「それじゃ、一ベル鳴らします。役者さん板付きお願い致します。照明さん作業灯お願い致します」
舞台では、スタッフの動きに緊張感が走る。上手袖には、小人の衣装でスタンバイを待つ聖闘士4の姿も見える。
浦部は、「行くぞ。山本」と言い、赤いボタンを押した。
会場は静けさの中、リリリリリリリリッと一ベルが鳴った。

続く。


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~今日の一言~

将棋でも受験でも、本番の緊張感は、準備が出来てこそ味わえるものです。
結果とは別に、怠け者には関係の無い心の感覚かも知れません。

児童劇と富士山と青春!(その30)


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ー緞帳が上がる、その瞬間!ー

浦部を助手席に乗せて、日吉の倉庫をトラックが出発したのは、まだ日の上がらない朝の五時過ぎのことである。闇の中、薄く乾いた空気が微かに広がり、トラックは誰も走らない国道を、我がもの顔して走って行く。春の朝は、都会の中でも緑の匂が強く、人間以外の動物の動きも活発になり、鳥や犬猫たちの鳴き声も弾んでいる。少し時間が経つと、真っ暗な視界が少しずつ白く広がり、街灯が消えて行くのが分かる。中央高速に乗るころには、青空が大きく広がり、東からオレンジ色に輝く朝日が少しずつ昇り始め、西の山々を鮮やかに写し出している。
高速道路を、トラックは百キロ以上のスピードで気持ち良く走り抜けて行く。
甲府ICを下りると、畑の広がる甲府市の街並みに入った。荒川を渡ると直ぐに県民文化ホールが見えてくる。
駐車場から会館裏手に回り、バックで搬入口前に着けた。長岡と浦部は、皆が集まるまで時間があるので、ひと眠りすることにした。
暫くすると、助手席の窓から中を覗く女の子の姿が見えた。
「あれ、誰だ?」長岡が目を覚ますと、浦部が、「仲田だ。山本たち来たんだ」と言って起き上がった。駐車場の方を見ると、タウンエースとコースターが並んで止まっている。その周りには、揃いの劇団やまびことロゴの入ったジャンバーを着た皆が集まっていた。国分寺から今回の公演に参加する、芸術劇場の研究生たちも来ている。
長岡はトラックを下りて簡単な挨拶をすませ、皆を見回した。舞台監督の浦部、音響の山本、それ以外のスタッフと小人四人以外役者全員が芸術劇場の人たちである。
皆は何となく落ち着きがない。やまびこのメンバーもそうだが芸術劇場のメンバーも、経験の無い人たちが多いせいかも知れない。
その時、搬入口の中から、鍵の開ける音がカチャカチャ聞こえた。
長岡が、「浦部時間だ!開くぞ」と言うと、搬入口を背にしていた浦部は振り向いた。
握り拳が震えているのが見えた。
浦部にとっての本番はこの舞台にある。立体の小屋からパネル類、ドロップ(間口十間の大きな布で出来た背景)、ぬいぐるみ、小道具と、全て自分で作り直した作品が使われる。それが今日と明日の二回だけ、二カ月間ほとんど休み無く、ギャラも無く、作った芸術である。
搬入口の開き扉が内側に、大きく折れるように広がる。光線のような陽射しが、闇の中をふわっと包むように、外と中の空間が一体となった。
扉の中から、会館小屋付きと言われる舞台のプロたちが五、六人出て来て、「どうぞ、時間です」と告げた。
浦部はトラックの運転席に乗り込み、バックで搬入口の奥までピタリと着ける。搬入を皆に任せ、会館専属の小屋付き技師たちと、打ち合わせのために裏から舞台を見回した。舞台から客席が広がる。広い、そして大きい。
浦部自身、この舞台は初めてではないのだが、自分がスタッフとして来るのではなく、舞台監督としての自分は、天と地ほどの違いがあった。
振るえる感情を抑えて、冷静に務める。
皆は、トラックから荷物を中に運び込む。アンプにミキサー、MDとコード箱、照明関係は会館の備品を使う。小道具と衣装箱は、縦横一間二間の木箱で十数個ある。ズラ(人形の頭、お面)は、布袋でやはり二十近くはある。これら道具類は女の子たちが担当している。音響機材は下手袖、後は楽屋前に運ぶ。
しかし、皆要領が分からないのか右往左往している。それを見た長岡は、打ち合わせをしている浦部に声を掛け、荷物仕分けを先にするように促した。
浦部はおどおどしながらも、皆の前で、
「まず女の子たちは、小道具と衣装とズラを直ぐに使える状態(分かりやすく)にしておいて。一人が二役三役やる人もいるから間違いないようにして下さい。音響のセッティングは大丈夫だね。照明は、小屋付きさんと動いて下さい。え~と、後は野郎が多いから。・・・・長岡は?」
「十一時ごろまでなら動けるよ」
「それじゃ、野郎は大道具の組み立てとドロップの取付けですね」
浦部は丸っこい体で、下手袖の綱元から上手奥に作る小人の小屋まで、広い舞台をコマネズミのように動いている。
津田はロビーで販売する物品やプログラムを、搬入口から長い廊下を何往復も運び、即席の売り場も作った。長岡は、舞台の方がある程度落ち着いて来たので、ロビーに出て来て窓口を作り、座席券の整理を始めた。
舞台では、照明の明かり合わせが最後まで続く。
明かり合わせは、サスバトン(照明機材)を下ろして手動で行う作業である。サスバトンが下りている間は舞台が使えないので、パネルや道具類、または役者の場ミリやリハーサルが出来ない。
開演は二時だが、一時間前には緞帳を下ろさなければならない。それまでには間に合いそうにもなかった。
転換稽古が出来ないので、浦部は役者と大道具スタッフを集め、各自台本を見ながらイメージトレーニングしておくように言った。
浦部はサスバトンが上がるのをジッと耐えながら待ち、時計を見た。少しでも時間が出来れば稽古するつもりである。それまで照明作業が終わるのを見ながら、本番中の事を考えていた。

続く。


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~今日の一言~

空間認知力ですか?なるほどですな。
棋力上達に当てはまりますね。
プロフィール

長澤席主

Author:長澤席主
他人を思いやれてこそ自立
傲慢で配慮がないのは孤立

名言カレンダー10月号より

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