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姪の美穂に電話した。


~雑色駅前将棋サロンホーム~

「おはよう。たーくん久しぶり。児童劇と富士山と青春!何とか終わったね」
友達の少ない私には、相談できる人がいない。
将棋やお店のことはともかく、ブログに関しては姪の美穂だけと言ってもよい。

~美穂からの電話再び~

「この程度の書写だけでも大変だよ。本当は、休むとか終わらすことを考えていたのだが、始めてしまうと止められなくなる。性格かな?」
「そこがたーくんの良いところかもね。結構貫く気持ちは強いよ。この作品だって、こうして世間に出すことによって、読まれることが大事だよ。そうしなければ、資料としてどこかに無くなるだけ、・・・・長岡さんも喜んでるでしょ」
「ああ、そうだね。電話した理由は他にあるんだ」
「なあに?」
「九月に昔の友人が亡くなった。六つも年下だった」
「そういうことは、・・・・しょうがないことでしょう。たーくんの年齢になれば、ありうる話だと思う。それ以上に私に話すことでもないわ。私と面識ない人でしょう」
「当然そうだ。友人の話だけなら美穂なんかに相談しないよ。他にもおかしな話が続いた。辛い時には辛いことも続く」
「なんか?・・・・そういうことは、たーくん得意でしょう。ピンチはチャンスなりとかやまない雨はない、みたいなこと。何か結果が出るまで待つこと、それからの判断で良いと思う。・・・・これは、たーくん自身がブログで書いていることだ。それとも、他人には言えて自分では出来ない?」
「分かり切っていることを、お前はオウム返しか、・・・・一番良い解決方法は時間との対話、待つだけ、次に何かの変化や結果、積み重ねや自然な流れに乗るのが良い」
「そういうことでしょう。・・・・ブログはこれからどうするの。将棋のネタだけで行けるの?」
「そうそう、だから友人の話を書く。のではなくて、その時代の話を書きたいと思っている。ブログの初期に、将棋センター編で昔の話を書いたことがあるが、それは客観性の強いものだった」
「あれは怒られたでしょう。名前出し過ぎだよ」
「そんなことないよ。当時はそれほどうるさくなかったし、まずいことなど書いていない。でも、半年前にイニシャルで怒られたことがある」
「あれね。たーくんもかなりへこんでいたよね。その後、仮名使うようになったよね」
「勿論、個人の特定はほぼしないようにする。それより今回は、主観を重点に置こうと思っている」
「読まなければ分からないけど、たーくん工夫する書き方するの?」
「そうだね。長岡君の書写のおかげで、少しは面白い書き方できるような気がする」
「直ぐ始めるの?」
「いや、分からない。まだイメージだけで、具体性が何もない」
「資料とかも必要だよね」
「それは自分の事が中心だから、主観だからあまりこだわらない」
「友人の死がキッカケなの?」
「あ!美穂は会ったことないが、知っていると思う」
「何となく分かるよ」
「何度も言うけれど、その作品は自分自身の話で、他人は関係ない」
「やっぱり、たーくんのブログだものね」

「恥じること、美穂はどう思う」
「いやだよ、そんなの」
「いや、恥ることとは、そんなことも最近考え出したことなんだ」
「分からない、たーくん」
「実は、自分自身と友達の街府中は、何かそのようなことが関係しているように思う。勿論、恥とは自分自身のことだけど」
「あたしは、たーくん得意な・・・・(無言)になってしまった」
「人間には感情があるから恥がある。しかし恥は、人それぞれ違うところにある。そしてそれは、命より重くなることもある」
「そうだね、それは分かるよ。特に女性は、恥に敏感だよ。・・・・でもそれが、友人の死や府中に関係するとは思えないよ」
「まあ、どう描くか?それ以前に書くかどうかも分からない。まだ先の事かな」
「結局は、あたしに何の電話だったの?話をしたいだけ?」
「それもある。美穂と話がしたかった。・・・・少し古い映画だけれど、愛を読むひと知っている」
「当り前よ、有名すぎる作品よ」
「それの感想書こうと思っている」
「ここで?・・・・何か本当に、大丈夫?」
「子供教室の関係上、視点は考えるよ。別にR指定でもないし、文芸作品だよ」
「本当に自由人そのものだね。たーくんは大したものだ」


~初心者(大人)女性子供将棋教室~

2017年季節は秋、心身とも充実した季節になります。
この時期こそ、新しいことにチャレンジしてみませんか?

頭のスポーツに適した環境ではないかと思います。
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~今日の一言~

悩むことは成長になると言うが、私は、それだけ無知だったとも言えるのか?
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教室の棋譜(32)後半戦


~雑色駅前将棋サロンホーム~

教室の棋譜(32) 後半戦

下手 I・K1級 対 上手 長澤席主

前回終了図

CIMG5138.jpg

駒落ち将棋は、駒の価値観が平手とは異なります。特に飛車落ち以上になると、大駒の価値が高くなります。
平手で金銀二枚と飛車の交換は、金銀が得になるケースがありますが、二枚落ちでは飛車の価値が高い場合が多くなります。
理由は、上手王の広さ、角交換が無い(角の使い方の難しさ)、上手に飛車を持たれる(一手で下段に打たれる)、などです。
だから上手の戦術は、角をけん制しながら飛車を攻める、方法が多くあります。
下手は、飛車を攻めの中心に使う工夫が求められます。

下手5八銀上手5六金 5七銀引同金 同銀3四歩 4四歩4二金
4五桂6二銀まで下図

CIMG5139.jpg

下手、銀が逃げるなら5六銀でした。
歩で桂を取りたくての5八銀だと思いますが、上手も歩で取られないタイミングを計っています。5七銀引きも、銀上の方が良かったと思います。
上手どちらの銀を取っても飛車が通ります。
結果、飛車が使えなくなりました。
下手二枚桂の活用でも、大駒の働きが悪く後の攻めが続きません。

下手4三金上手4一金 5六歩4七歩 5八金4八銀 6九飛3五歩
5五歩3六歩 4六銀3七歩成 同銀同銀成 同玉3四銀まで下図

CIMG5140.jpg

下手4三金は重く、疑問手でした。角と3六桂の行き場所がありません。
下手5六歩、ここでの桂取は遅く、上手も下手玉を薄くしてから桂を取り返します。
下手4六銀は機敏な一手、玉の広さを作ります。

下手4六銀上手3五歩 4七玉3六銀 5七玉4五銀上 同銀同銀
5四歩5六歩 6六玉5四銀まで下図

CIMG5141.jpg

下手5七玉は簡単に桂を取られました。ここは5六玉と頑張るところ。上手5五歩 同角5四歩 8八角から6五歩(6四桂の狙い)の予定。下手玉も広く、まだまだ捕まりそうもありません。
上手5四銀は楽観です。下手5六玉ならまだ大変でした。

下手7七玉上手6五桂 6八玉5七銀 同金同歩成 7九玉7六桂 
7七銀5八金 7六銀6九金 同玉2九飛 5九歩5八歩 7九玉5九歩成 
8九玉5八と 7九歩6八と 9六歩7八と 同玉6九飛成 8九玉7八金 
9八玉8八金 同玉7七桂成 同玉6八竜まで上手勝ち。 

CIMG5142.jpg

下手7七玉は悪手です。上手6五桂で将棋は終わっています。
以後、指し手のみ。


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~今日の一言~

ブログでの単純ミスは、書くのとは違い見逃してしまう事が多い。そこは一人でやっている辛いところ。しかし将棋用語を間違えるとは、立場上情けない。
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教室の棋譜(32)前半戦


~雑色駅前将棋サロンホーム~

教室の棋譜(32) 前半戦

10月18日(水)5時半頃
指導対局 二枚落ち 持ち時間30分30秒

下手 I・K1級 対 上手 長澤席主

続いてI・K1級対私、指導対局です。
I・K君は小学三年生、連盟道場でも1級、初段目前だそうです。
この将棋はともかくとして、二枚落ちの手合いは良い勝負だと思います。

上手6二銀 下手7六歩5四歩 4六歩5三銀 4五歩3二金 
3六歩5二王 3五歩2二銀 5六歩6四歩 6八銀6二金 5七銀7四歩 
4六銀6三王 4八銀7三金 4七銀8四金 5八飛7三桂まで下図

CIMG5136.jpg

二枚落ち将棋の一つの特徴に、歩の活用があります。下手の戦い方は居飛車です。上からの戦い方は、歩の使い方が多くなります。
二歩突っ切りは必然的に歩が入りやすい将棋ですが、銀多伝は戦い方が広がらない分、歩が入りずらい将棋になります。

4枚落ちの時もそうですが、上図から、上手7五歩~6五歩~2四歩と指し、3三桂の活用を急ぐ指し方もあります。一瞬、下手がどう指しても良くなる変化になります。しかし、そこで下手が決められないと一変に悪くなります。
下手の力が強くなったと思うと、定跡の8五金から一歩を取り、細かい将棋にします。

下手4八玉上手8五金 3八玉7六金 7八金8四歩 4八金2四歩
3七桂2三銀 5五歩同歩 同飛7五金まで下図

CIMG5137.jpg

上手8五金に下手7八飛車も定跡に書かれていますが、飛車角の悪形は否めません。銀多伝の考え方は、隙を作らないところにあります。気分的にも、怖い形にしない方が良いと思います。

上手8五歩の保留と7五金引きのタイミングは、下手6七桂の好手を嫌った指し方です。
上手2三銀で一安心。銀多伝は、確かに堅い指し方です。しかし、上手も遊び駒の2三銀(3三桂)の活用が容易になるところは見逃せません。それは二歩突っ切りと比べて、遊び駒だと思っていた2三銀(3三桂)が下手の玉に近いことで分かります。
下手5五歩同歩 同飛車で、上手7五金がタイミングです。

下手7七桂上手6五桂 同桂同金 5九飛5四歩 4四歩同歩
4五歩4三金 3六桂5五桂まで下図

CIMG5138.jpg

下手7七桂から動きました。少しビックリ!?実は銀多伝は、上手から良くする指し手が難しく、動かなければ下手が良くなるものです。少し早い動きに見えましたが、私は良い手だと感じました。
桂交換は、どちらが得でしょうか?本譜のように、上手は5五桂、下手は3六桂の使い方が焦点になります。
上図までの手順中、下手6五同桂では5九飛車として、上手に桂を取らして7七金とし、左金を使った方が手得を含めて良い構想だと思います。
上手は、6五金の使い方が全てだと言っても良いのです。戦いが徐々に右に行き、上手の駒が働き出します。

下手4四歩、上手の対応次第で将棋の流れも変わります。
上手、4筋の効き歩がこの将棋の急所だと思い、歩切れのタイミングと4七の叩きに期待して、5五桂を決行しました。
下手は、ここで間違えます。

続く。


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~今日の一言~

いつもいつも期待もたして、「続く。」はないよね。
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教室の棋譜(31)後半戦


~雑色駅前将棋サロンホーム~

教室の棋譜(31) 後半戦

先手 O・K2級 対 後手 I・K1級

前回終了図

CIMG5131.jpg

将棋の難しいところに、「手を渡す」ことがあります。攻めても受けても上手くいかない、そんな局面が千日手となるのでしょう。
しかし先手上図、そんな手を渡す局面では無く何か受けなくてはいけませんでした。
後手の直接的な狙いは、7五歩同歩 7六歩での駒得です。
後手の王様が薄いので、やや指しずらいように見えますが、5四金の構想が生きた指し方とも言えます。
7五歩6七銀 7六歩同銀 5五金が一例です。それ以外でも7五歩が入ると、後手指し手に困りません。

先手4八金引後手7五歩まで下図

CIMG5132.jpg

先手は4八金の手渡しでした。それでは先手、何を指せば良かったのでしょう。
考えられる手は、6六角、8六飛、6七銀 5八金でしょうか?
6六角は、何か打たされた感じもしますし、この形では狭すぎます。
8六飛は、後手それでも7五歩 同歩7六歩 同飛8八角(8七角) 7四歩8二銀 6六角9九角成 5五銀くらいでしょうか?誘いの隙か本当の隙か分かりません。
6七銀は反省です。そこでの後手は、4四歩が良さそうです。先手5六歩なら4五歩~7九角。それ以外なら1五歩~3四角の要領です。
5八金は窪田流(形に拘らない)で、さすがに級位者では指しきれません。

先手6七銀後手7六歩 同銀2六歩 4七金2七歩成 同銀2六歩 
3八銀2七角 3九玉4四金 2七銀同歩成 2八歩同と 同飛2七歩まで下図

CIMG5133.jpg

後手2六歩は十字飛車狙い。これは指し過ぎで、単に5五金で良かったと思います。
2六歩に対する先手4七金では、2六同歩で、同飛2七歩で後手4六飛なら、6七銀7六歩に8六飛車で先手指せます。
後手は飛車を持たれる展開になると、4二銀が悪形に見えます。

先手3九玉に後手4四金は、5四角成の狙いですが、3八角成同金 2七歩成が明快でした。先手も2七銀とは取らずに、2八歩5四角成の方が良いと思います。
後手錯覚で、と金が歩に戻り、後手2七歩に先手8八飛車ならまだ分からない将棋でした。

先手1八飛後手2八銀 3八玉1五歩 同歩1七歩 同桂1五香
2五歩同桂 2六歩1七桂成 2五角1八成桂 同香同香成まで下図

CIMG5134.jpg

先手1八飛車は敗着です。角二枚では攻める手立てがありません。手を抜くことが出来ず、指し手も乱れます。

先手6四歩後手6八飛 4八金引2九銀不成 2七玉6四飛成 6五銀5五竜
1六玉2三桂 1五歩1一香 2七玉6五竜 同桂1五桂まで後手の勝ち。

CIMG5135.jpg

後手6四飛成では、4八飛成で必死です。しかし6四飛成は、後手のこの戦法に対する捉え方が見えます。それは、常に自陣を警戒していることです。
感想戦でも、入玉の展開を何回か進めていました。王様が中段に行くと、5四金の働きも良くなります。局面を隅々まで見ていることが分かります。
最後は、きれいに寄せました。


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~今日の一言~

上手でも下手でも駒落ちを多く指すと、中段玉や入玉の勝ち方を覚えます。
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教室の棋譜(31)前半戦


~雑色駅前将棋サロンホーム~

教室の棋譜(31) 前半戦

10月18日(水)4時頃
練習将棋 先後指定 
持ち時間 30分30秒

先手 O・K2級 対 後手 I・K1級

半年ぶりの教室の棋譜です。
ここは、何のブログか分からない?とりあえず将棋がメインだと思います。
先手O・K2級は、大人のお客様?でもありませんが、今は、将棋の技術を上げることが最優先(生活習慣病も)です。
後手I・K1級、私の教室では生え抜きといえますが、いつまで来てくれるのか?
小さな教室です。中途半端に終わらせないように、私自身考えなければならないことです。

指導の難しいところは、弱ければ弱いほど手がかかるものです。だいたい5年生で6級あたりまで来ると、行儀含め一人前に見えます。
それは、どこの教室でも同じだと思います。
「強くなったら家に来なさい」それは、あまのじゃくな言葉でもあり、無責任な指導でしかありません。
今の将棋界、子供たちの夢は、小学生の段階で決まりなのでしょうか?
これだけ人生長くなっていて、50過ぎても新しいことが出来る時代、何かがおかしいと気づかなければいけません。

先手7六歩後手3四歩 6六歩3二金 6八銀3三金 6七銀4四金
7七角3三角 8八飛2二飛 4八玉3五歩 3八玉8二銀まで下図 

CIMG5130.jpg

後手3三金から4四金は、私のように古い感覚では理解できません。これも、コンピュータ将棋の影響でしょうか?
金と言う駒は、自身の王様(終盤では相手の王様)の近くで使うことが理想です。そして三段目でも欠点が出やすい駒とされています。本譜の場合、その欠点を歩で支えている点が一つあります。しかし働きということになると、後の展開を見るしかありません。
手将棋での「観る」意識は、上達に大切な練習です。そして独創性も、細かい見方(駒運び)を創ることだと思います。

先手の6六歩からの相振り向かい飛車は、一番オーソドックスな形です。
それに対しての、後手3五歩と8二銀が構想としての狙いだと思います。
後手のI・K君は、「相手がどのような戦法で来ても対応できる」と言うように、ある程度システムが出来ているようです。

先手2八玉後手2四歩 3八銀2五歩 5八金2六歩 同歩同飛
2七歩2四飛 8六歩7四歩 8五歩7七銀 5六銀6八王 4六歩7二王 
9六歩6二金 6五歩4二銀 9五歩1四歩 1六歩5四金 
4七金7七角成 同桂3三桂まで下図 

CIMG5131.jpg

上図は損得ありませんが、先手やや作戦負けです。
後手は、だいたいこのような局面を想定して、指し手を進めていたように思えます。
手順中、先手4七金が疑問手だと思います。
角換わりの将棋は、左金が意外とポイントになるケースが多く見られます。相居飛車の腰掛銀を見れば分かると思います。
先手4七金は、左側に隙を作りすぎ、まだしも4七銀から3八金ならバランスが保てています。それだと、後手はどのように駒を進めていたのでしょうか?

上図にしても、後手4二銀に不満があります。今は3三桂の支えになっていますが、・・・・そんなこと関係ないのかな?
指し手の難しい先手は、次に悪手を指してしまいました。
それを逃さないところに、この戦法の面白味があるのだと思います。

続く。


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~今日の一言~

努力否定論、楽して上手くいく。そんな言葉も最近耳にします。
それは、好きなことであり正しいことを意味しています。
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児童劇と富士山と青春!(あとがき)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

私(長澤)の感想です。

児童劇と富士山と青春!は、二十年以上前の作品です。
富士山はともかく、児童劇と青春は、今とは異なる世界観もあるように思えます。
時代の違いに物質的な違いもありますが、それは映像の進化または舞台の迫力、観ることで得られる感動は今とは違います。
そんな素朴な環境の中、児童劇と青春は、どんな意味があったのでしょうか?

生きていることは、何かをしなければならない。それが生きている価値であり、意味でもあります。
青春とは、「生きている価値を表現する」ことにあったと思います。
そして昔の青春は、若さの象徴(今しか出来ないこと)と思われていました。
今時代は、人生そのものが青春(高齢化社会の現象でしょうか?)との認識もあるように思えます。
ただ、若いころにしか出来ないと思うことは、「一生懸命出来る」ことでもあるようです。
一生懸命出来ることが青春であり、手段は演劇でも将棋でも、仕事や学業でも同じです。そして他人に評価され、得る物(お金や技術)があれば、励みになると言うことだと思います。
一生懸命出来ることは、勿論自分自身の生きる糧となり、必ず人生にプラスになることです。
長岡君の一生懸命が、人を集め運を呼び込み、一つの結果を出しました。
その手段が、児童劇だったと言うことです。

私自身このメンバーとは、長岡君以外はそれほど面識がある方ではありません。
浦部君も、同じ劇団の後輩でした。山本君、島田さん、木村さん、仲田さんは、お互い顔と名前は知っている程度です。津田さんと山野さんは、業界では私より先輩でしたので、仕事上多少交流はありました。
そしてこの年(平成七年頃)の夏、本文でもありますが、演劇教室の打ち上げに呼ばれたことがありました。
その時、メンバー全員と会いました。それも二十人以上の飲み会でしたので、あまり個人と話す機会はありませんでした。
今思えば、こうして作品制作を手伝ったことで、いろいろ興味も湧きます。ひとりひとり、劇団やまびことの出会いから想い、出来事など聞きたかった。
今では過去の事であり、昔話になってしまいます。やはり、その当時の話とは違い、脚色や忘れてしまう事もありそうです。

長岡君の目線、当然ですが作品作者の主観で話は進みます。客観的な状況や長岡君のいない場面でも、やはり長岡君の思考になっている。それが小説だと言えばそうなるかも知れません。
ただ、浦部君の目線や思考は、また違ったところにあります。他のメンバーも同じです。それを知りたいと思うこと自体、無理な話と言うことになるのでしょう。

劇団やまびこは、長岡君が立ち上げて動かした劇団ですが、実は、長岡君の意志はどこにもありません。
一言でいえば、成り行きと言えます。
出会いとしての運が、すべてを決めていました。
そういう意味では、長岡君は対人運に恵まれています。それは、長岡君自身の人柄がそうさせたとも言えます。
極めつけは、ちいちゃんとの出会いではないでしょうか?

私が思うに長岡君は、取り柄のない普通の人間ですが、一つだけ才能があったと言えます。
それは、「続ける才能」です。
努力が出来るとか、根性があるとか、精神力が強いとか、そう言う話ではありません。彼は諦めは悪い方ですが、どちらかと言えば三日坊主タイプです。
作品中その23、皆の気持ち、そして想い(その4)で、長岡君は手紙(辞退届?)を夜中、芸術劇場のポストに入れようとしていました。ところが、その日に稽古場で問題が起きて、皆も残っていました。そして長岡君の姿に皆の心が動き、一気に運を呼び込んだ。
ちょっと出来過ぎに思えますが、それも一つの続ける才能と言えます。それとも人柄?私から見ると、人柄が良いとは思えない。この時は、何か光るものがあったのでしょう。
最後に聞きました。
「ちいちゃんとは何者ですか?本当に見えたのですか?」
「ちいちゃんとは、劇団やまびこ自身そのものだったと思います。・・・・そう言うと、劇団の皆に申し訳ないかな?・・・・後は、読んで頂ける皆様が決めることだと思います」


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~今日の一言~

ここでの失敗は、やはり細切れに作品を出したことだと思いますが、ブログの枠組みを考えると仕方のないことだった。
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児童劇と富士山と青春!(その38)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー劇団やまびことちいちゃんー (その5)

舞台もあらかた片付くと、掃除に入る。
長岡も、舞台上をモップを掛けて歩いていると、客席で、椅子に戯れて遊んでいる女の子が見えた。おや?ちいちゃんと思い。モップを掛ける手を休めて女の子を見た。一人で遊んでいる。女の子の近くに掃除のおばさんがいるが、気が付かないのか、無視しているのか、女の子も周りを気にしていない。
長岡が見ていると、女の子と目が合った。大きく手を振り、何とも言えない笑顔を見せた。長岡も思わず、小さく手を振り笑顔で応えた。
後から浦部が声を掛けてきた。
「長岡、何しているの?気でも狂ったか?・・・・早く終わらせようぜ」
「あ、あ~ん、そうだな、終わらせよう」
浦部と話して客席を振り返ると、女の子はいなくなっていた。掃除のおばさんも、何事も無かったように掃除している。
長岡がモップを戻して搬入口から外に出ると、陽射しの強さを感じた。おっ!と思い。道路まで出てみた。暖かな感触が、体いっぱいに降り注いだ。白い雲の隙間から見える青い空を仰ぎながら、「うん。そういうことかな」と自分自身に言い聞かせた。
ちいちゃんはやっぱり、自分自身の中にいる天使だったんだ。誰の心の中にでもいる、美しい心、正しい心の天使、それが俺のちいちゃんだったんだ。
搬出も終わり、搬出口の前に全員集まった。
長岡が、「お疲れ様でした」と言うと、皆も、「お疲れ様でした」と言った。どんな世界でも元気の良い挨拶は大切である。
長岡は、「まあ、何とか無事公演も終わり、営業的には県民文化の売り上げで、これからも劇団やまびこの活動が出来そうです。これからも一緒に頑張りましょう」と言うと、皆、青空の下で笑顔を浮かべた。
雨の雫が残り、光り輝いて見える三台の車に分乗して、富士市民会館を後にした。
陽射しの当たる搬入口、その陰から、ちいちゃんはヒョッコリと顔を出した。出発した車の後姿を見ながら、道路までピョコンと出て来た。
「あたしは、お兄ちゃんの心の中に存在する天使じゃないわ・・・・。希望を持って、これからも頑張ってネ。バイバイ」と笑顔で見送った。
フッと寂しそうな表情に変わり、立ち止まり、涙がこぼれた。
ハイエースを運転する長岡は、隣に座る津田さんに、
「養護施設の先生、生徒たちと一緒に帰りましたか?」と聞くと、
「ええ、帰る時に、楽しい劇有り難うございましたって言っていたわ。施設のバスが、時間に合わせて迎えに来ていたわ。変な心配事言って悪かったわ」と答えた。
長岡はホッとした表情を浮かべて、
「いえ、ノウ、プログラム(ノープロブレム)ですよ」
と冗談のつもりで言った。後ろから、「つまらんわ~」とか「白ける~寒い~」と皆に笑われた。
長岡は後ろに座る女の子たちに向かって、
「こんなぬいぐるみ劇でも、皆は大変な思いをしただろう。演劇は、自分たちは苦しむだけ・・・・。どう、もう嫌いになった」
とバックミラーで仲田を見た。
「え!?あたしに聞くの?いや、ハハ、ハハハハ」と照れながらも、「あたしは続けるよ。これからも、・・・・きつくて辛かったけど、何だか楽しいわ」と言う。
「貴方は楽しいかも知れないけれど、周りの私たちは大変だったのよ」
木村が意地悪そうに言った。
「何よ~。あたしはいつも、皆を助けているのよ」
「え~、本当に、いついつ、どの場面よ」
「も~、いつもよ」
と二人でからかい合った。島田は、
「本当は、ぬいぐるみ劇はちょっと、と思ったけど、普通の舞台と何も変わらないわ。お面被っていても表情出るもの、驚いたわ」
「でも、ぬいぐるみ劇はこれで終わりなんでしょう。長岡さん」
と山野が聞いた。
長岡は運転しながら首を傾げて、
「そうだね。当面は六月に一週間ほど、演劇教室(小学校中学校の講堂公演)やりたいね。皆は五月から稽古に入るよ」と言うと、後ろの四人は声を揃えて、「ハーイ」と答えた。
「その間、バイトしなければならないのね」
仲田の言葉に、長岡はフッと考え、
「もしかしたら、聖闘士4で何か稼げるかも?」
と言うと、皆は本当に白けてしまった。
島田は自分のバックから何かを取り出して、
「駄目よ長岡さん。悔しいけど、私たち何も出来ないわ。ダンスだけのグループよ。・・・・このカセットテープ聞かして」と長岡に手渡した。長岡はテープをデッキに入れながら、「何のテープ?」と聞くと、「ちょっと古いけど、ボイジャーよ、ユーミン」と言った。
「今回、甲府市のイベントが上手くいったからって、下手にお金かけて、聖闘士4でビジネスすると失敗するわ。本当に甲府ではラッキーだったんだから」と山野が言った。
「つまらないな~。せっかくスターになりかけたのに」と仲田が言うと、また皆で笑った。
「ハハハハそうだね。まだまだそんな時期ではないね。少し粘り強く、演劇教室で力を蓄えるのがいいのかなあ」
ハイエースが河口湖に出ると、助手席に座る津田さんが、「湖に富士山が映っているわ。美しいわネ」と感動して言った。
夕日のオレンジ色に染まった、大きな富士山が右手に見えた。河口湖にも水色に染まった富士山が映っている。
後で、島田がカセットの曲に合わせて口ずさんでいる。
「遠くで貴方が呼んでいる~両手を広げて待っている~私も目を閉じて答える~今全てが生まれたわ~」と何回か繰り返しある歌詞が、やたらと印象に残った。
青空と暖かな陽射しと広大な山脈の、清々しい姿。そんな大自然の中にいる和らいだ大きな気持ちを、明日につなげたいと考える長岡たちだった。

終わり。


~初心者(大人)女性子供将棋教室~

2017年季節は秋、心身とも充実した季節になります。
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~今日の一言~

長々とお付き合いのほど、有り難うございました。
本当にお疲れ様でした。
長岡君も、少しでも多くの方に読んで頂いたことを感謝していると思います。
次回は、私(長澤)の感想(あとがき)を書きたいと思っています。
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児童劇と富士山と青春!(その37)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー劇団やまびことちいちゃんー (その4)

「観れないの」ちいちゃんの言葉が頭に残った。
舞台では、小人たちの人形がハイホーハイホーと歌いながら、草原の挿絵から下手袖の小屋に消える。変わって人が入るぬいぐるみの小人たちが、一気にワーッと上手から出て来た。小さな舞台なので、七人の小人はより迫力あり、少ないお客でもドッと盛り上がった。
中央の座席に座っている養護施設を見てみると、一番端にいるはずの女の先生が見当たらない。暗くて分かりにくいが、座席は空席になっている。あれ?と思い、どこにもいない。視線を舞台に向けた瞬間!後ろから声を掛けられた。
「長岡さん、長岡さん有り難うございます。私、今日初めて、ぬいぐるみ劇の白雪姫観ました」
明らかに施設の先生だ!小さな低い声、ロビーで聞いた声と同じだ。・・・・どうして私の名前を?
長岡は振り向くことが出来なかった。また、金縛りだ。あの、ケヤキ公園のときと同じだ。恐怖感がそうさせるのか?
冷や汗が流れ落ちる。舞台は淡々と進んでいる。
「どうして、どうしてなんですか?僕たちとどんな関係が・・・・」
と聞くと、女の先生は、
「理由は、長岡さんが考えている通りです。どんなに小さなことでも、心にわだかまりとして残っていることがあれば、忘れることが出来ないのです。特に子供のころの想いは、人々の心や時空を超えるのではないでしょうか」
と囁いた。
次の瞬間、暖かく柔らかい小さな腕が肩に回った。
「ちいちゃんは、白雪姫観れて良かった。ここに来たいと思っていた。お兄ちゃんを信じて良かった」
尚も長岡の腕に手を回し、ピョンピョンと飛び跳ねて甘えた。
「一緒に白雪姫観よう。舞台では、お兄ちゃんの友達が一生懸命演技しているんだ」
会場いっぱいのお客が盛り上がる中、小人たちは自由に元気良く飛び跳ねる。
新しい会館で、時代を越えて劇団やまびこは公演している。長岡は、ちいちゃんの小さな手を握り、震える声を隠しながら、
「皆、皆、ちいちゃんのために頑張ってくれている」と言った。
「お兄ちゃんのお友達は、みんな大好き!ちいちゃんも、お兄ちゃんのお友達なのネ・・・・」
長岡は、笑みを浮かべて頷いた。
「劇団やまびこは、ちいちゃんのおかげで出来た、素晴らしい仲間たちなんだ」
フッと、ちいちゃんの声が女性の声に変わり、
「劇団やまびこはいつまでも、千鶴の心の中にあるのね」
長岡は、ずいぶん大人びたことを言う子だなあと思った。後を振り返ることが出来た。・・・・ちいちゃんの姿は無かった。
!?前の座席を見ると、一番端に女の先生は座っていた。
今の出来事はどこまでが本当で、どこから夢なのか?分からなかった。すでに恐怖は何も感じなかった。
暫くすると休憩時間になった。頭の中をハッキリさせて、不安ながらも客席を下りて女の先生に挨拶すると、先生は何事も無かったように見えた。
「今日は、本当に有り難うございました。生徒たちも大変喜んでいます」と言った。
とても三十年後のちいちゃんとは思えない。長岡は頭を下げてロビーに出た。
蛍光灯の明かりだけの暗いロビーでは、数人のお客を前に、津田さんがプログラムを売っている。閑散としたロビーを歩いて、ウインドガラスの向こうの黒い空を見上げると、ひたすら濁った雨が強く窓ガラスを叩き、水しぶきを上げている。
会場に戻ると、客席の雰囲気も暗く、とても一幕を見た後の空気とは思えない。何か蒸し暑さだけが感じられ、外の暗さと同じように、やる気が伝わってこなかった。舞台もお客も同じだ。今日という日が、そういう日なのか?長岡だけがそう感じているのか?
客席からは小さな囁き声は聞こえるものの、シ~ンと静まり返った、白けた空気が漂っていた。
養護施設の座席を見ると、女の先生が座っていた席は空席だった。先生は一人だけなのに、二十人もの生徒を置いて歩き回るはずがない。本ベルが鳴り、客電が落ちると長岡は、下手横の通路の扉に体を預けて、二幕が始まるのを見ていた。
エンディング前の舞台裏はパニック状態だ。長岡は裏に回り、下手袖から皆の集中している姿を見ていた。浦部は、体中汗と埃で真っ黒になりながらバトンの綱を引いていた。
「長岡、手伝いに来たのか?ロビーが暇なら搬出まで手伝ってくれ!」
何となく、言われるがままにエンディングから終演、搬出と、皆と一緒に動いた。
会場にお客がいなくなると、緞帳を上げて舞台を広くして、搬出作業に取り掛かった。
ロビーでは津田が、残件整理や物品の後片付けをしている。フッと窓ガラスから光線のような陽射しが、プログラムの白雪姫に差し込んだ。津田がプログラムに手を触れた時、暖かな感触がした。
「あら!?陽が差し込んで来たわ。晴れたのね」
とウインドガラスから空を見上げた。
白い流れ雲から青空が少しだけ覗き、暖かな陽射しが、ウインドガラスから斜めに差し込んでいた。

続く。


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~今日の一言~

これが終わったら何を書きましょうか?別に期待されていませんが。
そうだ!あれにしょう。でもしかし、書いて大丈夫か?
問題は書き方でしょうね。
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児童劇と富士山と青春!(その36)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー劇団やまびことちいちゃんー (その3)

長岡はウインドガラスの手前まで行き、
「今は交通も便利だと思います。路線バス一本で来られるのでは?」
「そうかしら。それに養護施設の場合、生徒二十人に先生一人では危険すぎるし、そんな引率、普通ないわ」
「生徒たちを見ると、車椅子の子供や一人では何もできないほど、重症の生徒はいないみたいです。症状が軽度の子供ばかりで手間がかからないから、」
と言いかけると、津田は長岡の言葉を遮り、「分かりました」と言い、不満そうな表情を見せた。
暫くすると一ベルが鳴り、トランシーバーに受信音が入る。
「長岡、ロビーのお客は捌けたか?」
浦部は、下手袖から入りの悪い客席を見回して悪口を言った。長岡は、
「お前、分かっているだろう。前売り五十二枚、当日売り八枚、招待三十四枚だ。全部で九十四人、売上合計十万八千円だ。ハハハハ参ったか」とやけくそに言った。
「悪い悪い。でも九十四人か、・・・・しょうがないね。皆も昨日で全て出し切ったって言うのか、疲れが出て調子が悪そうだ」
長岡はトランシーバーを持ち換えて、
「お前らそれでもプロか、俺は昨日と今日、同じギャラ払うんだぞ!少しはピシッとしろよ、ピシッと」
「ごめんごめん。あまりにも落差がありすぎて・・・・。まあ、ロビーが暇なら舞台でも観てろよ。昨日は観てないだろう」
「ああ、そうだな。もう浦部の白雪姫は観られないよな、価値あるよ」
と言ってトランシーバーをOFFにした。
ロビーは津田さんに任せて、本ベル前に一番後の座席に座った。百人足らずのお客が千席ある座席の中央に集まっていた。
余裕のある空間に、長岡は体を伸ばし、この興行の失敗を振り返った。以前には、この程度の入りは何度も経験している。責任はあるが、それが自分に降りかかることは無かった。今回は、興行がそのまま自分に降りかかる。でも、甲府市の成功が今日の失敗を消している。気持ちに余裕があるものの、何か引っかかる。それは当然、富士市での動機である。
富士市での公演は何も意味がなかった。あれだけ浦部や津田さん、皆に迷惑かけてまで公演したのは、勿論、奇跡を信じて、幻の養護施設とちいちゃんの幻想だった。前の方に座っている養護施設の女の先生と生徒たちは、勘違い以外の何ものでもない。勿論奇跡など、小説や映画の中だけの話だ。・・・・ただ、現実に無いものを信じたい。と思いながらも養護施設の生徒を見ていると、津田さんが言うように不思議な空気は感じる。お互い話もしないし笑いもしない。ただ、緞帳の閉まった舞台を見つめているように見える?女の先生も、一番端でジッと座って動かない・・・・。まさか、そんなこと無いよ。
本ベルが鳴り、客電が落ちオープニングの音楽が流れた。緞帳が上がると、客席が静かなせいか、だんだん瞼が重くなり、ゆったりとした座席の中に体が沈んで行くのが分かる。
長岡の周りにはお客がいないはずだが、耳元で話し声が聞こえる。
「家の子供にも見せてあげたいけど、なかなか子供向けの劇は観る機会ないのよ」
「そうね。富士市に来るのは、年に一、二回かしら・・・・今回は白雪姫よ」
「これだけ会場いっぱいお客も入れば、なかなか座席券も取れないものだわ」
「なにせ、富士市の新しい会館だもの。今までの富士吉原会館じゃ・・・・」
長岡は、この人たちは、いったい何を話しているのか?こんな殺風景な会場にと思って、フッと目を開けると、いつの間にか客席はいっぱいになっていた。
たくさんのお客が期待するざわめきの中で、ぬいぐるみ劇が始まった。
今は、昭和四十一年四月。富士市に、新しい照明設備の付いた文化会館。こけら落としで、劇団やまびこが真っ先に公演していた。
長岡はビックリして、会場全体を見渡した。お客の熱気を肌で感じ、ボー然としていると、後の通路にス~ッと女の子が立ち止まった。
一瞬ゾクッとしたが、振り向かなくても誰だか分かった。長岡は舞台を観ながら、
「ちいちゃん、約束は守ったぞ。お兄ちゃんは本当に苦しい思いをして、この文化会館で白雪姫の公演を実現させた」
と言ったが、会場の盛り上がりの中、ちいちゃんの声はかき消された。
聞こえないと思った瞬間、小さな腕が肩から首に回り、耳元で、子供の声だが低い声で、
「ちいちゃん嬉しい。約束守ってくれた。でも、・・・・でも、でもちいちゃんは白雪姫観ることが出来ないの」
と悲しそうに告げた。長岡は、自分の肩にある小さな腕を、そっと撫でた。
「何言っているんだ。今、目の前に白雪姫いるじゃないか、もうじき、ちいちゃんの大好きな小人も出て来るよ」
ちいちゃんは、長岡の肩に抱きつき甘えながら、
「でも、でも、ちいちゃんは観れないの。観れないの」
と泣き出して言った。長岡は、小さな手を握りながら目を潤ませた。舞台が見えなくなり、暫く意識の無い時間があった。
ハッと目が覚めると、今いるのは古い市民会館だった。少ないお客の囁きが耳についた。
夢なのかと思った。

続く。


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~今日の一言~

今週末から天気が悪くなるそうな。じめじめうっとうしい季節でもないのに。
うっとうしいのは選挙だけにしてくれ!秋晴れの日々が待ち遠しい。
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児童劇と富士山と青春!(その35)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー劇団やまびことちいちゃんー (その2)

ロビーの仕込みも終わると、津田さんは物品販売の椅子に座り、プログラムを見たり会館案内(小紙)を見ながら時間を潰している。長岡は受付に座り、ボンヤリとお客が来るのを待ちながら外を眺めていた。
舞台上では浦部を中心に、小人の小屋の隠し方や十五尺パネルの転換、そして小道具の確認。役者やスタッフが本番中スムーズに動けるかを悩みながら仕込みを進めていた。
外の雨足も強くなり、皆の気持ちも暗くなる。会館内の湿度も下がらない。止まらない汗と埃で身体も汚れる。一生懸命動いているが、皆の能率は一向に上がらない。だらだらとした雰囲気が強く、県民文化のような活気はなかった。
長岡は十二時になると、ロビーに届いていた、お昼の弁当を持って楽屋に行った。やはり昨日のような感動や活気はない。これは天候の悪さや客の入り、古い会館の雰囲気と本番二日目など、全てが関係している。しかし、この重苦しさには辛いものがあった。
楽屋の入り口で、「お昼だよ。皆で好きな物食べてね」と言って、ドアの横にお弁当を置いた。
ロビーに帰る途中、下手袖を通ると浦部と山本がPA席にいた。
浦部は長岡に気づくと、「今日は時間に余裕があるな?」と言った。
長岡は渋そうな顔をして、首を横に振った。
「弁当楽屋に置いて来た。早く済ませろよ。・・・・皆元気がない。今日の雨空と同じだ」
「う~ん。昨日が良すぎたので、疲れがどっと出たのかなあ~」
浦部が言うと、長岡は腕組をした。
「聖闘士4もいつもはもっと元気なのに。・・・・表情の無い人形みたいだった」
浦部は胡座に座り直して、下から見上げた。
「聖闘士4も、人気があるのは甲府市だけだからね。ここ富士市では、ただのぬいぐるみ役者だよ」
三人は軽く笑った。山本は揃えた両足に腕を回して、
「本番二日目のジンクスではないでしょうか?」
と真顔になった。長岡は首を振りながら、「どうかねえ。分からない分からない」と言いながら、ロビーの方に行った。
受付では津田さんが、お客と話していた。近づいてみると、一般のお客ではなさそうだ。
「津田さんどうしました。お客ですか?」
と聞くと、津田さんは振り向き、
「あ、ご招待のお客よ。それも引率で二十名ほど」
と言った。団体の招待は受けていないはず。
少し小柄で、地味な服装にショートカットの四十くらいの女の人だ。
「保母は私しかいません。後は全員施設の生徒です」
と小さな声で言った。長岡は、
「団体の招待は聞いていませんが、どこの団体でしょうか?」
と聞くと、女の先生は尚も小さな声で、
「富士宮市の・・・・養護施設です。富士宮市役所の方から今回の公演を聞いて、二カ月前には決まっていたと思いますが・・・・」
と長岡の顔を少し遠目に見て、答えた。
長岡は驚いた。
施設の名前は聞き取れなかったが、問題の引率施設が富士市内だと決めつけていた、・・・・二カ月前なら時期も同じだ。問題の養護施設は、この団体だったんだ。
養護施設の話は本当の話で、何かを期待した自分がおかしかったんだ。やはり、富士市で奇跡は起こらない。単なる失敗した赤字公演でしかなかった。
長岡は椅子に座り、言葉が出ない・・・・。
「何か、間違いでもあったのでしょうか?私たち遠くから来ていますので、もし間違いなら座席券買いますけど・・・・」
女の先生は、小さな声だがはっきりした口調でそう答えた。
長岡はハッとして、女の先生を見上げた。
「いえ、結構です。今日は座席に余裕がありますので、招待客を待っていたぐらいですから、・・・・どうぞお入り下さい」
女の先生は、ホッと表情を変えて笑みを浮かべ、「有り難うございます」と言って頭を下げた。そして施設の生徒たちの傘をビニール袋に入れて、受付の前を通りロビーの隅に並ばせた。
「一般のお客が、外で傘さして待っているわよ。・・・・一時十分、開場した方がいいんじゃない」
と津田さんに急かされた。
三十人くらいのお客を入れると、受付には誰もいなくなった。緞帳はまだ下ろせないので、ロビーで待つことになる。
「あの養護施設の子供たち、いったいどうやって富士宮から来たのかしら。園バスは、駐車場に見えないわ」
津田さんは、不思議そうな顔をした。雨の降り頻る駐車場を見ると、乗用車が十台くらい止まっているが園バスは無かった。

続く。


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~今日の一言~

この章に関しては、いろいろな人がいろいろな意見を言っていた記憶がある。
読み手によって、感想がこれほど変わるのも面白いことだ。
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児童劇と富士山と青春!(その34)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー劇団やまびことちいちゃんー

長岡は一人部屋に入って、ベットにゴロッと仰向けに寝た。今日一日の出来事が何回も回想された。午後四時頃、富士市民に電話掛けた時には前売り五十二枚しか出ていない。当日売りも期待できる材料など何もない。それだけに、甲府市の成功は本当に命拾いだった・・・・。
四階の窓のカーテンを広げると、富士市独特の夜景が広がる。赤と白の煙突から、もくもくと白い煙いが暗い空へと広がり、消えて行く。
そんな光景を見ながら、想い浮かべる。富士市でのぬいぐるみ公演の意味とは、ちいちゃんはどんな形で出現するのか?自分とは本当に関係あるのか?ぬいぐるみ劇や白雪姫などには何も結びつかない。それならなぜ、俺たちは富士市で公演するのか?ちいちゃんは、養護施設の引率は、自分が見た夢の一件はいったい何だったんだろうか?
長岡は、富士市の遠い夜景を眺めながら想いを巡らせていた。
翌朝、長岡は少し早めにロビーに下りて行く。すでに数人の役者たちがソファーに腰かけて雑談していた。長岡は「おはよう」と挨拶して外を見た。
ロビーから見える外の景色は、空一面に厚い雲が広がり今にも雨が降りだしそうな雲行き。国道沿いなのか車の往来が激しく、粉塵が舞い上がる中を、子供たちも身をかがめながら歩いている。
何となく、気の乗らない不安な空気を感じさせる朝だった。
「嵐が来るって、朝の天気予報で言っていたわ」
振り向くと、津田さんが心配そうにウインドガラスから空模様を眺めていた。
「雨が降ると、当日売りに響くわね」
「ええ、でも天気が良くても三十人くらいしか来ません」
「前売りは幾らくらい捌けたの?」
「五十二枚です。・・・・金額にして九万円です。会館費用も出ません」
「キャパは千席ぐらいよね。・・・・でもそれは、初めから分かっていた事よ」
津田は慰めるように言った。
皆はぞろぞろとロビーに集まり出して来た。さほど広くないロビーがいっぱいになると、浦部は仕込みのミーティングを始めた。
雨の降りそうな曇り空の下で、三台の車に分乗してビジネスホテルを出発した。
九時前には搬入口の前で、皆はそれぞれに気持ちを引き締めた。
「全然イメージが違うよ」
浦部は建物を前にして、長岡にそう言った。
「どんな風に違う」
「随分古くなったような、使いづらそうな感じがする・・・・。勿論、時間的な古さじゃない」
「新しい小屋(会館)がたくさん出来たからだよ。ここにも(富士市)ロゼシアターみたいな凄い会館あるし」
「そういうことかなあ~。そういえば飛行船、今日ロゼシアターであると聞いたが?」
その時、搬入口の古い扉が、ギギ~ッと鈍い音を響かせて開いた。
小屋付きの人が顔を出すと、皆は、「おはようございます」とこの時ばかりは元気良く挨拶した。
二回目の仕込みということもあり、搬入はスムーズに進んだ。浦部と長岡二人で、搬入口の錆びついた扉を閉めると、黒い雨雲からポツリポツリと雨が降り出して来た。
「搬入だけはぎりぎり間に合ったな」
「搬入だけだな。・・・・しかし小屋の中は暑いな、汗ばかり出て来る」
「うん。湿気が多いね、気温も二十度越えているな」
長岡は、腕の袖で汗を拭いながら舞台を見た。荷物と作業している人たちで雑然としている。広さがなく、思った以上に狭く感じた。
「狭いなあ~。間口もそうだが、奥行きが全然ない」
「間口は十間で問題ないが、奥行きは五間で少し足りないかな」
「吊り換えとか、小屋を隠す作業が大変じゃないのか?」
「いや、逆にバトンは多い。吊り換えは休憩時間の一回で済むし、小屋の移動も前後だけだから、昨日よりも楽は楽だ。だいたいが古い作品なので、このくらいの会館に対応してあるんだ」
浦部は、余裕のある表情で言った。
長岡は搬入が終わると、座席券や文具の入った鞄を持って、客席の中を通ってロビーに行った。あまり広くないロビーから、雨雲が良く見えた。蛍光灯みたいな電灯が暗いロビーに、異様な雰囲気を演出している。
物品販売のセッティングをしている津田は、長岡を見て、
「昨日と違って狭いわね。・・・・改めて座席表見たけど、昨日と違う意味で大変ね」
「ええ、自分の努力の無さに泣きたくなります。津田さんに県民文化を紹介して貰えなければ、劇団やまびこの明日はありませんでした」
座席券を机に並べていると、ポツリポツリと雨音が聞こえる。フッとウインドガラスを見上げると、雨が強くなり、跳ね上がっているのが分かる。色も、少し濁った黒い雨に見えた。
「ずいぶん強くなってきましたね」
「そうよ。春の嵐が来るのよ」
津田さんは一人で笑った。

続く。


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~今日の一言~

この作品も最後の章に入りました。
もう少しの辛抱です。
やはり、将棋の枠内に入れるのは無理があったか?
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児童劇と富士山と青春!(その33)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー緞帳が上がる、その瞬間ー (その4)

強い陽射しが黒いウインドガラスを通して、心地良い暖かさに変えている。ロビーでは、津田さんの使っている電卓の音がピッピッピッピッと響くほど静かで、休憩時間の人混みが嘘のように落ち着きを取り戻している。
一転して舞台上では、二千五百人のお客を前にし緊張の連続だった。この辺りまで来ると、役者スタッフと緊張感よりも集中力が上回り、雑念の無い動きになる。
今、森の中で白雪姫が、小人たちの手で棺に入れられた。すると王子様が現れ、小人たちと悲しみを分かち合う。
浦部は進行表を確認して、綱元へ戻った。
「ラスト前、転換行くよ」
と言いながら三バトンを下ろすと、スタッフが最後のドロップを吊り換えて、フィナーレの舞台準備に取り掛かった。
静かなロビーでは、物品売り場で下を向いて計算している津田に、「どうぞ、少し休んで下さい」と言って、自販機のカップコーヒーを机の上に置いた。津田は顔を上げて、「あ、有り難う」と言って一口すすった。
一息ついて津田は、「ぬいぐるみはロビーに出すの?」と長岡に聞いた。
終演後、役者がお客に挨拶することを、送り出しと言う。ぬいぐるみがロビーまで出て来ると子供たちは大変喜ぶ。しかし今回は、小人や聖闘士4の人気も大きいし二千五百人のお客に対して、ロビースタッフ二人では危険すぎる。
長岡は、「今回は出来ませんね。怪我人が出たら最後ですから」
「この入りだと、何があっても可笑しくないわね。・・・・私は物品売り場に?」
「ええ、お願いします」
長岡が客席の方に行きかけると、津田は少し大きな声で、「長岡さんは搬出手伝うの?」と聞いた。
「そうですね。五時までには出ないといけないし、男手は必要だと思います」
客席に入ると舞台では、大音響と共に白雪姫のフィナーレを迎えていた。お客の拍手が大きく響いた。感謝の気持ちで言葉も出ない。
拍手と共にゆっくりと緞帳が下りる。舞台上では役者たち全員横一列に並び、緞帳は再び上がった。もう一度大きな拍手に迎えられた。アンコールだ。役者たちは手を振り頭を下げた。やがて客席の明かりが強くなり、緞帳が再び下りた。
長岡は会場の扉を開けて回り、お客が出て来るのを待った。少し経つと、帰り支度の終わったお客がぞろぞろと出て来た。表情を見ると笑顔で満足そうだ。お客の中には、「今日は楽しかったわ。有り難う」と言ってくれる人もいた。この時ほど、演劇をやっていて本当に良かったと思い、また目頭が熱くなった。
緞帳の下りた舞台上では、役者たちがズラを外して放心状態になっていた。
浦部は、「ケツナシ逃げるよ(会場の貸し切り時間が無いので、搬出を急ぐ)」と怒鳴った。
皆は舞台の余韻も持てないまま、搬出作業に取り掛かった。舞台がある程度片付くと、荷物をトラックに積み込んだ。
外に出ると、暗い舞台と違い夕方でも眩しさを感じる。皆は改めて一息ついたのか、そこらに座って自由に休んでいる。長岡と津田も裏に来て、「さあ、出発するか!早く富士市に行って明日に備えよう」と長岡が言うと、皆はトラック、コースター、ハイエースに乗り込んだ。
まだ、陽射しが温かい五時前の気持ち良い風を受けながら、三台の車は甲府市を後にして富士市に向かった。
長岡が以前営業で、富士市から甲府市に向かった逆のコースになり、ちょうど富士山の前を横切るコースにもなる。
「今日は天気が良いから、富士山の前を通る頃、夕焼けが富士山の雪の部分と重なり合い、銀色に浮き上がる光景が見ものだよ」
長岡は、同じハイエースに乗っている津田や聖闘士4に言った。
暫く走り、前に立ち寄った富士の麓に着いて、少し休憩することにした。ちょうど青空と夕焼けのバランスが良く、富士山が美しく壮大に見える。車から降りると、あまりにも広い、広い大自然を前にしてボ~ゼンと立ちすくむ。都会の小さな事を全て忘れて、思いっきり何かを発散させたくなる。皆は童心に戻ったみたいに、広い原野で走り出したり飛び跳ねたりと、はしゃぎ回った。
長岡と津田は皆の元気な姿を眺め、心穏やかになる。
「以前ここに来た時、あの局長の撮った写真が、・・・・銀色に写る富士山が見えたんですが、今日は少し靄がかかっているし、銀色には見えませんね」と富士山を前にして言った。
「あの写真は冬だけのものよ。多分、空気中の粒子の関係だと思うわ。銀色の富士山は冬場だけの風物詩、限定品よ」と津田さんは言って笑った。
「冬場だけの限定品かあ、貴重品ですね。・・・・でも今見える、春の富士山、壮大さは変わりませんね」
「皆、初舞台は相当緊張してたのかな?物凄い解放感だわ」
「あれだけ重労働の舞台が終わって直ぐなのに・・・・若さなのかな?」
二人が笑いながら呆れていると、
「長岡さ~ん、津田さ~ん。富士山をバックに、みんなで写真撮りましょう」
と木村が近づいて来た。
青空の中に広がる大平原、富士山が大きくそびえ、夕焼けが山々をオレンジ色に彩っている。それをバックに、皆で何枚か記念写真を撮った。
長岡は、運転しながら今日一日を振り返った。成功は奇跡に近かった。もしかしたら、明日の富士市民も期待が持てるかも。・・・・あの夢の中の、ちいちゃんが現れて何かが起こる、そんな気がしてならない。
明日はロゼシアターで飛行船も公演する。しかし、何か神がかり的な思いもある。劇団やまびこは、ちいちゃんに、何か魂でも与えられたような力があるのだと。明日の公演で何かが起こる、そう信じて疑わない。
三台の車がビジネスホテルに着いたのは、八時も大分回った頃だった。長岡は皆に、明日の出発は七時半だと伝えて、解散した。

続く。


~初心者(大人)女性子供将棋教室~

2017年季節は秋、心身とも充実した季節になります。
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~今日の一言~

長岡君の私記には影響されるなあ。
私も何か、長いやつ書いてみようかなあ。
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児童劇と富士山と青春!(その32)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー緞帳が上がる、その瞬間!ー (その3)

ロビーはお客も捌け、だいぶ落ち着きも取り戻した。フリーになっているトランシーバーからは、舞台裏の声が聞こえてくる。
津田が、「凄いわ。一階二階と二千人以上入ったかしら」と言うと長岡も、「最後の集計が楽しみですね」と答える。
とホッと一息ついて、椅子に座り直した。この時、机の上には残件が数百枚程度に減り、下の箱には千円札中心に、メチャクチャに詰め込まれていた。
長岡は、椅子に寄りかかり暫く放心状態になる。目が掠れて周りがぼやけて見え、頭を下げて、フッと脳裏に光を感じた。今回の公演が成功したことで、劇団の存続が決定したのだと感じた一瞬でもあった。
その時、頭の中に雷が落ちたようにリリリリリリリッと本ベルが鳴った。
「津田さん、窓口お願いします」
長岡は本ベルが鳴り終える前にと、広いロビーを走り扉を引いて会場の中に入った。
全体を見回すと、今、客電が少しずつ落ち、暗くなり、会場のざわめきも小さくなっていく。一瞬、完全暗転になる。
長岡はどうしても、この瞬間を見逃す訳にはいかなかった。
緞帳裏の舞台上では、板付きした役者たちに緊張感が走る。下手袖には浦部が、PAには山本が、上手袖に聖闘士4、皆本ベルが鳴り止むのを待っている。本ベルが鳴り終わると直ぐに音先行で始まる。
幕開けの曲が流れて緞帳が上がる瞬間、何もない何も見えない空間が出来ると、幕開きの音楽がオーケストラと共に会場全体に響き渡り、緞帳の上がって行く隙間から強い光線がサーッと広がると、会場の子供たちがワーッと盛り上がった。
緞帳が上がり終えるのを見届けると、・・・・長岡はフッと、涙がこぼれそうになる。
芸術劇場に飛び込み、嘘を並べて出来もしない約束をして、泣き顔に笑みを浮かべ、雨に打たれながらの営業では何度も辞めようかと思った。どんなことがあっても、いつも皆の顔が、元気な笑顔が俺を支えてくれる。皆が頑張っているからこそ幕が開けられたと、長岡はこの時ほど友情というもの、人間は独りでは生きていけないと実感した。
緞帳は全開しオープニングの音楽も終わり、一幕一景、王宮の場面に入った。
これから、この一つ一つの演技が劇団やまびこの歴史を創って行く。長岡は今一瞬、回想に走ったが、まだまだ振り返る時期ではない。頑張れ浦部、頑張れ皆と思いながら窓口に戻った。
津田は、山積みになっている半券を整理しながら、チラッと長岡の顔を覗いた。
「どうだった。劇団やまびこの初演の姿は?・・・・皆大丈夫だった」
「ええ、大丈夫です。皆元気な姿で舞台にいます」
と長岡は答え、机の上に乱雑になっている残券整理に取り掛かった。
舞台では二景も終わりに近づき、今、白雪姫が小人の小屋を見つけた場面だ。
この作品では、小人七人のぬいぐるみ製作が一つのポイントとして上げられる。大人が入るぬいぐるみで、如何に小人らしく作るかが問題であった。実際には、頭を大きく身体を横太りに、足を短く作ることによって小人らしく出来上がった。
浦部は下手袖から三景に備えて、皆に指示を出してから綱元に行った。暗転になり、二バトンを上げて三バトンを下ろし、ドロップを付け替える。中割れ式の小屋を回転させて、お后の部屋から小人の小屋に換え、小道具も揃える。次に十五尺パネルを用意して・・・・。舞台裏は徐々に忙しくなり、他の役者やスタッフも走り回る。
混乱の中、ようやく舞台も整い、小人に入った役者たちが舞台に出て行くと、会場はどよめきや小さな笑いの渦がいくつも出来た。
浦部は、下手袖から会場の反応を感じ取ると、「これからだよ。これから彼女たちの本当の実力が出るのだ。稽古のなせる技だぜ」と独り言を言った。
浦部は進行表を見ながら三バトンの裏に行き、上手袖にいるスタッフたちと、お后の部屋の仕込みを始めた。舞台では小人の小屋の周りで、白雪姫と小人たちの演技が続いている。
浦部たちは、表舞台の演技や客席の反応をドロップ一枚隔てた真裏で聞きながら、息を殺して静かにしかも敏速に、時間と戦っている。
「ヒ~ヒヒヒ、白雪姫もこれまでよ」
一幕最後の毒林檎を作るお后の姿に、テープの台詞が重なり、暗い音楽が流れて緞帳が静かに下りた。
ロビーでは、売り上げの整理を終えた二人が、休憩中に販売する物品売り場を設置して、休憩時間に備えた。
長岡は一幕終演後のお客の反応が気になり、会場の雰囲気を確かめに中に入った。
満員に膨れ上がった会場を何回見回しても、改めて目頭が熱くなる思いがした。
急いでロビーに戻り、今度は津田さんの手伝いをする。物品売り場では、たくさんの人だかりが出来て、津田さん一人では大変そうだった。
楽屋では、役者スタッフと一幕を終えて疲れ切っているが、何とかやり終えた安堵感の空気がある。上隅にあるモニター画面には、緞帳の下りた舞台が映り、会場のざわめきが聞こえてくる。
二ベルが鳴り、音楽先行で二幕の緞帳が上がった。
浦部は袖から、小学生も多い客席を眺め、「これは、小人の人気よりも聖闘士4の人気かな?」と思った。
舞台では、小人たちが踊りを楽しみながら、自由で軽快な演技を見せて、客席を尚も盛り上げている。

続く。


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~今日の一言~

我慢すること、行動すること、両方とも大切なことですが結果は異なります。
改めて、時間の使い方は難しいことだと感じます。
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長澤忠男

Author:長澤忠男
目標を掲げることが出来なければ
成功することは不可能だ

名言カレンダー10月号より

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