児童劇と富士山と青春!(その33)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー緞帳が上がる、その瞬間ー (その4)

強い陽射しが黒いウインドガラスを通して、心地良い暖かさに変えている。ロビーでは、津田さんの使っている電卓の音がピッピッピッピッと響くほど静かで、休憩時間の人混みが嘘のように落ち着きを取り戻している。
一転して舞台上では、二千五百人のお客を前にし緊張の連続だった。この辺りまで来ると、役者スタッフと緊張感よりも集中力が上回り、雑念の無い動きになる。
今、森の中で白雪姫が、小人たちの手で棺に入れられた。すると王子様が現れ、小人たちと悲しみを分かち合う。
浦部は進行表を確認して、綱元へ戻った。
「ラスト前、転換行くよ」
と言いながら三バトンを下ろすと、スタッフが最後のドロップを吊り換えて、フィナーレの舞台準備に取り掛かった。
静かなロビーでは、物品売り場で下を向いて計算している津田に、「どうぞ、少し休んで下さい」と言って、自販機のカップコーヒーを机の上に置いた。津田は顔を上げて、「あ、有り難う」と言って一口すすった。
一息ついて津田は、「ぬいぐるみはロビーに出すの?」と長岡に聞いた。
終演後、役者がお客に挨拶することを、送り出しと言う。ぬいぐるみがロビーまで出て来ると子供たちは大変喜ぶ。しかし今回は、小人や聖闘士4の人気も大きいし二千五百人のお客に対して、ロビースタッフ二人では危険すぎる。
長岡は、「今回は出来ませんね。怪我人が出たら最後ですから」
「この入りだと、何があっても可笑しくないわね。・・・・私は物品売り場に?」
「ええ、お願いします」
長岡が客席の方に行きかけると、津田は少し大きな声で、「長岡さんは搬出手伝うの?」と聞いた。
「そうですね。五時までには出ないといけないし、男手は必要だと思います」
客席に入ると舞台では、大音響と共に白雪姫のフィナーレを迎えていた。お客の拍手が大きく響いた。感謝の気持ちで言葉も出ない。
拍手と共にゆっくりと緞帳が下りる。舞台上では役者たち全員横一列に並び、緞帳は再び上がった。もう一度大きな拍手に迎えられた。アンコールだ。役者たちは手を振り頭を下げた。やがて客席の明かりが強くなり、緞帳が再び下りた。
長岡は会場の扉を開けて回り、お客が出て来るのを待った。少し経つと、帰り支度の終わったお客がぞろぞろと出て来た。表情を見ると笑顔で満足そうだ。お客の中には、「今日は楽しかったわ。有り難う」と言ってくれる人もいた。この時ほど、演劇をやっていて本当に良かったと思い、また目頭が熱くなった。
緞帳の下りた舞台上では、役者たちがズラを外して放心状態になっていた。
浦部は、「ケツナシ逃げるよ(会場の貸し切り時間が無いので、搬出を急ぐ)」と怒鳴った。
皆は舞台の余韻も持てないまま、搬出作業に取り掛かった。舞台がある程度片付くと、荷物をトラックに積み込んだ。
外に出ると、暗い舞台と違い夕方でも眩しさを感じる。皆は改めて一息ついたのか、そこらに座って自由に休んでいる。長岡と津田も裏に来て、「さあ、出発するか!早く富士市に行って明日に備えよう」と長岡が言うと、皆はトラック、コースター、ハイエースに乗り込んだ。
まだ、陽射しが温かい五時前の気持ち良い風を受けながら、三台の車は甲府市を後にして富士市に向かった。
長岡が以前営業で、富士市から甲府市に向かった逆のコースになり、ちょうど富士山の前を横切るコースにもなる。
「今日は天気が良いから、富士山の前を通る頃、夕焼けが富士山の雪の部分と重なり合い、銀色に浮き上がる光景が見ものだよ」
長岡は、同じハイエースに乗っている津田や聖闘士4に言った。
暫く走り、前に立ち寄った富士の麓に着いて、少し休憩することにした。ちょうど青空と夕焼けのバランスが良く、富士山が美しく壮大に見える。車から降りると、あまりにも広い、広い大自然を前にしてボ~ゼンと立ちすくむ。都会の小さな事を全て忘れて、思いっきり何かを発散させたくなる。皆は童心に戻ったみたいに、広い原野で走り出したり飛び跳ねたりと、はしゃぎ回った。
長岡と津田は皆の元気な姿を眺め、心穏やかになる。
「以前ここに来た時、あの局長の撮った写真が、・・・・銀色に写る富士山が見えたんですが、今日は少し靄がかかっているし、銀色には見えませんね」と富士山を前にして言った。
「あの写真は冬だけのものよ。多分、空気中の粒子の関係だと思うわ。銀色の富士山は冬場だけの風物詩、限定品よ」と津田さんは言って笑った。
「冬場だけの限定品かあ、貴重品ですね。・・・・でも今見える、春の富士山、壮大さは変わりませんね」
「皆、初舞台は相当緊張してたのかな?物凄い解放感だわ」
「あれだけ重労働の舞台が終わって直ぐなのに・・・・若さなのかな?」
二人が笑いながら呆れていると、
「長岡さ~ん、津田さ~ん。富士山をバックに、みんなで写真撮りましょう」
と木村が近づいて来た。
青空の中に広がる大平原、富士山が大きくそびえ、夕焼けが山々をオレンジ色に彩っている。それをバックに、皆で何枚か記念写真を撮った。
長岡は、運転しながら今日一日を振り返った。成功は奇跡に近かった。もしかしたら、明日の富士市民も期待が持てるかも。・・・・あの夢の中の、ちいちゃんが現れて何かが起こる、そんな気がしてならない。
明日はロゼシアターで飛行船も公演する。しかし、何か神がかり的な思いもある。劇団やまびこは、ちいちゃんに、何か魂でも与えられたような力があるのだと。明日の公演で何かが起こる、そう信じて疑わない。
三台の車がビジネスホテルに着いたのは、八時も大分回った頃だった。長岡は皆に、明日の出発は七時半だと伝えて、解散した。

続く。


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~今日の一言~

長岡君の私記には影響されるなあ。
私も何か、長いやつ書いてみようかなあ。
プロフィール

長澤席主

Author:長澤席主
他人を思いやれてこそ自立
傲慢で配慮がないのは孤立

名言カレンダー10月号より

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