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旅?いえ、地獄です。 蜘蛛の糸? 2


正気に戻る。真っ暗の中、少しづつ目が慣れて来ると二畳くらいの独房の中である。
胡坐して、うたた寝をしていると、「罪人出ろ」と独房の扉が開いた。眩しい!白くぼやけ瞼を少しづつ開き、見えたものは!?そこには鬼が二人、いや、二匹立っている。
二匹の鬼に連れられて、暗い洞窟をよろよろと歩いて行く。暫くすると、赤く小さな光が見えて来た。その光が段々と大きくなり近づいて来ると、何とも言えない?太く低い唸り声とか高い叫び声が響いて来る。同時に嫌な腐った悪臭も感じて来た。
光を真正面にした時、火山の噴火口のように、どろどろと煮えたぎった赤い血の海を見た。洞窟は岩肌の出口で、火山の大きな窯を見下ろす形になる。見える悪光景は、何万もの罪人が苦しそうに、浮かんでは沈み、熱さでどろどろに焼け溶ける姿であった。
「最後に残す言葉は?」鬼が聞いた。
「トンネルを抜けると、そこは地獄だった」と答えた。鬼は真顔で、「アホか」と言い、背中を押した。私は真っ逆さまに落ちた。
「あ~~あ~~」と落ちた。「観たまま、感じたままの言葉が出ただけだ~~~」と遠くに消えて行く叫び。

川の中、いや、灼熱の血の海に消えた。それからが大変だ。灼熱地獄の次は極寒地獄で凍らせて、それを剣の山に串刺しになり、動けないところを、鬼に皮をはがれるやら舌を抜かれるやら、想像通りの地獄そのままだった。
暗い山崖の中では、何万もの罪人が同じように苦しんでいた。

御釈迦様は、天国のお花畑の池のほとりにある、水面の覆っている蓮の葉の間から、下の様子を御覧になっていました。この天国の蓮の下が水晶のような水を透き徹して、ちょうど地獄の底に当たり、覗き眼鏡を見るようにハッキリと見えます。
するとその地獄の底には、長澤と云う男が一人、他の罪人と一緒に蠢いている姿が、御眼に止まりました。
御釈迦様は、便宜上、蓮の葉の上にいる極楽の蜘蛛に聞きました。
「あの男は、罪人の顔をしていません。阿保面だが、誠実さも感じます。何かの間違えで地獄に落ちたとしか考えられません。罪名は何ですか?」
御供である極楽の蜘蛛は、バインダーの資料を取り出して、
「長澤忠男ですね。少々お待ち下さい。」と言い、「あ、これですね。偉人侮辱罪とあります」
「偉人侮辱罪?そんな罪があったとは、知りませんでした。で、細かく聞かして下さい」と御釈迦様は、柔らかな美しい気持ちで、勿論、便宜上、助けてあげたいと思っています。
「芥川氏の神の存在が御釈迦様とあることに対して、疑問、不満、苦笑、蔑視、見下す、大笑い、の表現に対する罪。あと、裁判官に対する関西弁疑惑、とも書かれています」
「なんじゃと、私が神ではないと、そう言うのか?」御釈迦様の表情は曇り、少し丸い顔を赤らめ、眼を開けて一点を見つめた。極楽の蜘蛛は少し脅え、後ずさりながら、「言った、ではありません。想った、とあります」
「それじゃ仕方も無いですな、助けるのはよしにしましょう」と軽く小石を蹴るお茶目なしぐさを見せて、極楽の蜘蛛を笑わせた。

地獄では来る日も来る日も、血の窯、剣山の山、極寒の海、鬼の拷問と、同じことの繰り返しが続きます。
私はそんな苦しい日々を、無限に続けなければならないのです。無限に苦しい日々を続ける?無限に?・・・・そりゃそうさ、死んでいるのだからどんな目にあわされても、それ以上は無い!だから同じ苦しみを続けるだけだ。
でも不思議なことに、どんなに苦しくても、人の心(この場合、人間では無いのだけれども)には、「慣れ」と言うものがある。
そして同じことの繰り返しであることに、飽きも出てきた。
時間割を作った。
一時間目、剣の山「痛い」二時間目、灼熱の海「熱い」三時間目、鬼に舌を抜かれる「返せ」四時間目、毒蛇に脳みそを吸われる「戻せ」・・・・、結局は明日も同じことを繰り返すのだから、である。
慣れとは怖いものである。地獄の苦しみも徐々にではあるが、普通のことになって行った。

苦しみが普通になると、今度は遊びたくなる。罪人は、拷問を受けることが仕事ではあるが、その仕事を遊びに変えたりもする。
つまり、ゲーム感覚で争うことにした。血の海や火の窯または極寒地獄は我慢大会となり、剣の山では障害物競争などである。罪人同士の戦いもある。鬼との異種格闘技戦なども人気があった。
そしてついに、地獄オリンピックも始まった。
いつの日か、私は何万もの罪人の中から、地獄チャンピオンにまで上り詰めたのである。

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そりゃあいろいろあるさ。
自分は、人生の旅人だもの。

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