児童劇と富士山と青春!(その2)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー負け組の挑戦状!ー その2

浦部の隣には、背格好が同じような女の子がいる。ひと目で妹だと分かる。
浦部は、地味な茶色のジャンバーに白いYシャツを覗かせて、丈の短い汚れたジーパンを穿いている。手にはビニールの手提げに、中にはプロレスグッズが見える。
「久しぶりじゃないか、まだやっているのか演劇」と浦部は問いかけてきた。
「俺は、二年ぐらいやっていないがチャンスがあれば自分で、と思っているが・・・・」
と言うと、浦部は腕組して考え込んだ。
「軽く飯でも、いや、飲みに行こう。僕も考えていることがあるんだ」と言った。
少し高い声で早い口調だった。演劇のこと、制作部のこと、知りたいこともあったので付き合うことにした。
水道橋駅のガード下で、浦部の妹と別れ、二人で安い居酒屋を探して店に入ると、狭い中を二階の座敷に通された。
やや暗い感じのする店で、座敷には四人掛けの座卓が四つあり、自分たちの他には若いカップルが二組いるだけだった。
麦酒とつまみを数品注文して、一息ついてから浦部が話し出した。
「同じ劇団しかも同期で同じ歳、でも仕事が違うからほとんど名前しか知らなかったよ。君も同じだと思うが・・・解雇されたときはショックだった」
と感情もなく早い口調で言うのが、浦部の喋り方の特徴でもあった。
少し意外に思った。
浦部が制作部にいたのは他にすることが無く、しょうがなくていたのかと思ったが・・・・だから長くいられたのだと、簡単に言えば少し鈍感?じゃないかと、違っていた。
「浦部にとっての演劇とは何?」
簡単な質問だが答えは難しい。
浦部は少し戸惑った表情を見せたが、麦酒を一杯グイッと飲み干した。少し赤い顔を上に向け、遠くを見る目をした。今の気持ちを素直に話し出した。
「僕の家は電機屋で、高校を出てからずーと家の仕事を手伝っていた。しかし若いだろう、まだいろいろなことに挑戦したいんだ・・・。でも、やりたいことが分からない。趣味は読書以外にあまり無いし、スポーツは運動神経が鈍いし嫌いだ。女は好きだが絶対にモテない。ギャンブルはばかばかしいうえ金も無い。演劇くらい味方になってくれたっていいじゃないか。でも役者はできないから制作部は辞められなかった。あと何年も演出部に昇格できなくても良かった。とにかく演劇から離れたくなかった。解雇されたときは、泣きたくなるほど悔しかった。悔しくて悔しくて仕方なかった」
浦部は、人に話すときとは違う。自分に言い聞かせるように話すときは、早口にならない。
「ここ数年、少しボーっとして、何もやる気が起きなかったよ。確かに君みたいに、他の劇団に行ったり、例えば本が好きなら編集の仕事とか原稿書いたりとか、それがだめなら校正とか現像とか印刷とかいろいろ仕事はあるけれど、気力がわかなくて・・・・だって、あれだけ制作部で頑張ったのに解雇とは、悔しくて悔しくて本当に何もしたくなくなった。君が劇団やるならば、僕も手伝うよ。中途半端はやだよ。情熱が持てる何かが欲しい。また演劇が出来るならば、木馬座での苦労も報われる・・・・」
今度は、自分が答えを出さなくてはいけない。
「確かに劇団はやりたいと思っているが、何も具体的な話は無いし自信も無い。どこから始めて良いのかも分からない」
自分の言っていることは、何も答えになっていないどころか、浦部の気持ちにも水を差している。
浦部は、やや赤い顔を前に乗り出し、
「とにかくだ。とにかく何か作品を、作品を創ろう。あまり面識のない君に期待するのもおかしいけど・・・・。こんなこと一人ではできない。仲間がいなければできないことだよ。長岡」
と言ってトイレに行った。
長岡は、ため息を一つついて大変な奴と会ってしまったなあ、と思った。
気づくと、二階の座敷には誰もいない。時計の針は十時半を回っていた。
麦酒も無いし、食べるものも無い。
浦部は、下で店の人に何か注文してから座敷に戻ってきた。
「寒いから、熱燗と焼うどんに湯豆腐注文した。別に嫌いじゃないよね。・・・・君は、もう十年近くもいろいろな劇団にいて、いろいろな作品を観たり、また自分でも経験しているだろう。そろそろ良い時期だと思うがね」
「なぜ俺の気持ちが、劇団の旗揚げに動いていると思っている?もしかしたら全然やる気が無いかも知れないよ」
浦部は笑みを浮かべて、
「別に無理に勧めはしないよ。ただ君の顔にも今勝負しないと、一生半人前の落ちこぼれで終わってしまう、と書いてある。やるやらないは自分自身だし、やる気が無いのに無理に勧めても失敗するだけだな」と言った。
長岡は座卓に肘を付き、考える。
「浦部がそんなに演劇が好きだとは思わなかった。そして、俺がこんな形で説得されるとは、思いもしなかったよ」と言って苦笑いをした。
浦部も笑いながら麦酒を継ぎ足して、「僕は、いつからでも動ける。その気になったら電話してくれ」と言う。

続く。


~初心者(大人)女性子供将棋教室~

2017年心機一転、新しいことにチャレンジしてみませんか?

暖かくなり、明るい季節が来ます。
頭のスポーツに適した環境ではないかと思います。
この時期に、何か習い事をしてみませんか?

将棋という歴史あるゲームを覚えて、知力や頭の回転力を育ててはどうでしょうか?

将棋サロンでは、低料金で一生の技術習得や趣味を通した新しい良い仲間つくりを応援いたします。


~初回無料体験教室あります~

親御様も無料見学出来ます!!
ので、お気軽にお越し下さい!!



~六郷杯リーグ戦~
参加者募集中です!

~初心者(大人)女性将棋教室も生徒募集しています!~

お問い合わせ 03-3737-0588

~今日の一言~

本当は私自身、ブログの夏休みと思ってこれを書写しているのだが、何か間違えたかな!?

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

長澤席主

Author:長澤席主
幸福は細やかな方がよい
過大な幸福は災いのもと

名言カレンダー9月号より

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
趣味・実用
4138位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
884位
アクセスランキングを見る>>
FC2カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
フリーエリア