児童劇と富士山と青春!(その18)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー探し物とは、夢話ですか?ー その3

「どうしたの?どうして黙っているの。そんな弱気じゃ何も出来ないわよ」
長岡は、このままでは埒があかないと思い、とりあえず答えを出した。
「分かりました。なんとか頑張ってみます」
「そうよ。その気持ちがないとね。じゃ電話切るわよ、いいわね」
「ハイ。ありがとうございました」
長岡は電話を置いて、全面薄く黒いガラス張りの広いロビーのソファに座り込み、ため息を一つついた。
芸術劇場のデータを信じすぎていた。津田さんが、直ぐに動員できる会場を教えてくれると思っていた。あまかった。夢の中から一気に現実へと引き戻された。寒い朝、早起きしても布団から出られないのと同じ状態である。天気が良いのがせめてもの救いだ。一日ここでボケーッとしているわけにはいかない。重い体を起こして、とにかく動かなければ、考えなければいけない。県民文化ホールはキャパ二千五百席もある大ホールだ。仮に一人千五百円として、二千人入れば三百万。何とかなる数字だ。頑張っている皆にも、ギャラを少しずつ払うことだって出来る。
長岡は、ソファから立ち上がり出口に向かった。外に出ると、身体が縮みあがるほど寒く、急ぎ足で車に乗り込んだ。空元気でも良い。仕事仕事仕事と気合いを入れて、地図を広げた。
どこの幼稚園に行くか?昔、甲府市での営業を思い出しながら考える。ここは一園単位ではない。いくつもの園からなる系列園が多くあり、一人の園長が二つ三つ兼ねて経営している。ひとグループ引率出来れば、千人くらいの園児を動員することも可能である。しかしダメなら、それだけ可能性も大きく減ることになる。長岡は木馬座時代にお世話になっている、山元幼稚園に行くことにした。園長は他にも水元、川元、三つの幼稚園の理事長で、園児も千人近くいる。引率の実績はないが、行くしかない。
目標の半分のお客を逃すわけにはいかない。
山元幼稚園は、事務所が園舎とは独立した棟にあり、事務所も鉄筋のしっかりした建物で、入り口は中の見えるガラス張りの小さな引き戸になっている。ノックして中に入ると、小さなカウンターが入り口と並行してある。十人ほど座れるデスクが向かい合わせに並べてあり、正面の窓から園庭が見渡せる。
一番奥に理事長の姿があった。昔と変わらず細身の白髪で、銀縁眼鏡にネクタイ姿。あれ?昔は黒い縁だったかな。他には誰もいない。なんだか、富士市の白菊幼稚園と同じ雰囲気を感じるが、同じようにダメでは絶対に困る。
カウンターの前に立った。
「すいません。劇団やまびこと言います」
理事長はフッと顔を上げるが、劇団関係者だと知ると、素っ気ない態度で対応した。
「あ、劇団ね。そういえば一月の中ほどに飛行船配ったばかりだから、今回は諦めてくれ」
と言って、下を向いて仕事を続けた。長岡は一瞬ドキッとして冷や汗を流すが、気持ちを切り替えて続けた。
「今回はチラシの配布ではなくて、卒園公演として、引率のお願いに上がったのですが」
長岡はキッパリと言うと、理事長は顔を上げて不思議そうな表情をした。理事長の視線を感じ少し自信を無くすが、続けなければならない。
「どうしても素晴らしい劇を、こちらのグループの幼稚園の皆さんに、格安のお値段で公演出来ればと思いまして・・・・」
案の定、理事長はムッとして腕組みをした。
「引率?いまさら何言っているんだね。こんな忙しい時に、それに名前も聞いたことない劇団に、引率なんて出来るわけないだろう」
「私、以前木馬座にいまして、理事長には大変お世話になっています。今回だけは特にお願いしたいと思いまして・・・・」
まるで天にも祈る想いで言うが、理事長は、
「引率はそんなに簡単なことではないのだよ。また、来年の話ならともかく」
と言って、下を向きまた仕事を始めた。沈黙の続く中、重い空気が流れ、長岡はしばらく下を向いたまま動けなかったが、何かを思い立ったように頭を下げて事務所から出て行った。
山元グループはダメだった。だが諦めきれず、惰性でもう二、三の幼稚園を回ってみたものの結果は同じだった。
甲府市では、一月中に飛行船がひと通りすべての幼稚園を回っていた。富士市の時とまったく同じ状況になった。
午後になり、営業を幼稚園から保育園に切り替えた。
保育園は幼稚園よりも忙しい割には劇団には協力的だが、土曜日の午後公演では、なかなか日程も合わない。午後は保育園を十園回り、一園だけ飛行船の三月十四日が都合悪く、仕方なく劇団やまびこに決めてくれた。一人八百円で七十人の保育園だった。
初日で、やる気もすっかり伏せてしまった。夜の六時を過ぎると大衆酒場に行き、十時頃まで一人で飲んで、明日があるさ明日があるさ、明日こそ運が向いて来ると思い、ビジネスホテルで一夜を過ごした。
次の日は、昨日飲み過ぎて仕事にならず、午後二時頃まで車の中で寝ていた。それから近くの児童公園でボ~ッと過ごし、六時頃になるとまた大衆酒場で飲んで、一日が終わる。
その次の日は朝から映画館に入り浸りで、夜になるとまた同じ酒場で飲んで、一日が終わる。寝る前には必ず、明日は仕事すると思いながらも、次の日になるとやる気が起こらず、四日目になっても同じような一日になってしまう。
その後数日かけて残りの幼稚園を回ったが、結果は出せなかった。やる気が無くなると体調も悪くなる。疲れからか風邪を引いたみたいだ。少し熱もありそうなので、国分寺のアパートに帰ることにした。
国分寺に帰ったのは十二時頃だった。それから三日間は動けず、蒲団から出ることが出来なかった。

続く。


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~今日の一言~

長岡君の営業は、確かに「負けである」しかし、そこから逃げることは、永遠の負けを意味するところだ。
さあ、どうすれば良い!
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言葉や態度で表さないと伝わらない

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