児童劇と富士山と青春!(その19)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー探し物とは、夢話ですか?ー その4

二月も中旬なると、芸術劇場二階稽古場では、山野のダンスレッスンにも厳しさが出てくる。
一つのプロの舞台を作るのは難しく、毎日昼から夕方まで、基本中心に踊りのレッスンが続く。山本も音響としてレッスンに夕方まで付き合い、それから日吉の倉庫で作業を十一時頃まで続ける。浦部は、倉庫で寝泊まりして一日中作業である。こんな生活がひと月も続くと、さすがにだらけてくるが、そこを何とか山野や浦部がリードして、三月十九日の県民文化に間に合わせようと努力していた。
長岡はだいぶ熱も下がり、蒲団の中で、虚無な気持ちを消すことが出来なかった。
富士市と甲府市の興行は失敗に終わる。単純計算で、公演費から芸術劇場の経費まで、三月末までに二百万は下らない。今二日間の公演を中止すれば、半分の百万くらいの出費で済むが、・・・・二日間の公演は、皆の為にも絶対にキャンセル出来ない。出来ることは、公演後に休団すること。そして借金を少しづつ返していけば良い。そんな内容の相談をしようと、津田さんに会いに芸術劇場に行った。
まだ朝の十時前だが、二階の稽古場を横切る時、懐かしい旧白雪姫のテーマソングが流れているので、思わずドアを開けて稽古場を覗くと、山本と目が合ってしまった。山本は、
「久しぶりです。長岡さん・・・・。今、古いテープの編集作業をしています。これをまたMDに録音しますが、なにせひどいテープで、なかなか上手く行かなくて困っています」と苦笑いを浮かべながら明るく言った。山本以外に芸術劇場の研究生が四人いて、レッスン前の準備で体を動かしている。
長岡は入り口で、研究生の稽古姿をジーッと見つめていた。山本は気を遣い、
「あ!十一時までには皆来ますよ。昨日は日吉の作業が終わらなくて、皆日吉に泊まったんです」
「え!?いや・・・・皆?山野さんも」
「ええ、どうしても作業が進まなくて、後ひと月ですから」
長岡はびっくりして、まともに山本の顔を見ることが出来なかった。やや斜めを向きながら、力ない声で、
「俺、津田さんに話があるから四階に行って来るよ。また来るから」
と言って急いで稽古場から出て行った。階段を上りながら、とても居た堪れない、泣きたい気持ちになるが、でも劇団は持続出来ない。三月いっぱいだ。と心に決めて四階の事務所に入った。
「やあ久しぶり。どお調子は、顔色悪いわね。風邪でも引いたの?」
と、立て続けに明るい声で言う。・・・・余計、休団の話は切り出せなく辛い。長岡は青い顔の上に苦笑を浮かべ、口ごもりながらも、
「み、皆、頑張っているみたいですね」
「そうよ。やはり舞台に立てると思うと、たとえぬいぐるみ劇でも一生懸命よ。浦部君や山本君も大変よ。皆自分の時間も無いし、あまり寝ていないみたいよ。でも、何も無いところから・・・・。後ひと月でしょう」
長岡は震えて、目に溜まる涙を見せまいとした。そしてわざと窓際に行き、外を眺める振りをして、
「そうですか・・・・」と寂しそうに言った。
今は相談出来る状況ではないと思い、頭を下げて事務所から出て行こうとした時、
「長岡さん!ちょっと待って」
と言った。振り返ると、津田さんは机の中から小さな赤い包みを出して、
「プレゼントよ」と言って、手渡した。
長岡は下を向き、赤い包みを手にして涙声を隠した。絶対に泣き顔は見せられない。
「ハハハハそういえば、今日は・・・・。義理チョコですかハハハハ」
「そうよ。義理チョコよ、食べてね。甲府市の営業頑張ってよ。もう半月以上過ぎたから、大分動員出来たでしょう」
と言って、肩をポンと叩いた。長岡は下を向きながらも、
「ええ、何とか」
と小さな声で答え、静かに振り返り事務所から出て行った。
津田は、出て行ったドアの残像を見つめ、
「営業、上手くいっていないのかしら・・・・」
と独り言を言い、また何か対策を考えて置かないといけないのかしら、と思う。
長岡はこぼれる涙を拭きながら、急いで階段を下りて行き、津田さんに休団の話を切り出せなかったことを悔やんだ。そして外の公衆電話から、日吉の倉庫にいる浦部に電話した。
「おう、長岡か!助けてくれ、ゴミ山に埋もれそうだ。調子はどうだ。甲府市の県民文化も決まったんだってな。頑張っているな~、お前ひとりで、孤独との戦いもあるしなあ」
「俺、風邪引いて熱があるんだ。頭、重くて、凄く弱気になっているんだが・・・・。舞台道具は大丈夫か?県民文化の三月十九日に間に合うのか?」
長岡は心の片隅で出来なければ良いと思うが、浦部は元気な声で、
「今の調子で、今の調子でだ。一日五時間の睡眠さえ守れば大丈夫だよ。だからお前も絶対成功させろよ」と言った。
長岡は、どうすればいいのか分からないまま二階の稽古場に戻ると、山野たちが倉庫から戻っていた。そして長岡と目が合うと、
「ハイ、プレゼントよ。これは四人からのプレゼントよ」
と言ってチョコをくれた。
「ありがとう。大事にしまっておくよ」
と軽い冗談を言うのが精いっぱいだった。

続く。


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~今日の一言~

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