児童劇と富士山と青春!(その30)


~雑色駅前将棋サロンホーム~

ー緞帳が上がる、その瞬間!ー

浦部を助手席に乗せて、日吉の倉庫をトラックが出発したのは、まだ日の上がらない朝の五時過ぎのことである。闇の中、薄く乾いた空気が微かに広がり、トラックは誰も走らない国道を、我がもの顔して走って行く。春の朝は、都会の中でも緑の匂が強く、人間以外の動物の動きも活発になり、鳥や犬猫たちの鳴き声も弾んでいる。少し時間が経つと、真っ暗な視界が少しずつ白く広がり、街灯が消えて行くのが分かる。中央高速に乗るころには、青空が大きく広がり、東からオレンジ色に輝く朝日が少しずつ昇り始め、西の山々を鮮やかに写し出している。
高速道路を、トラックは百キロ以上のスピードで気持ち良く走り抜けて行く。
甲府ICを下りると、畑の広がる甲府市の街並みに入った。荒川を渡ると直ぐに県民文化ホールが見えてくる。
駐車場から会館裏手に回り、バックで搬入口前に着けた。長岡と浦部は、皆が集まるまで時間があるので、ひと眠りすることにした。
暫くすると、助手席の窓から中を覗く女の子の姿が見えた。
「あれ、誰だ?」長岡が目を覚ますと、浦部が、「仲田だ。山本たち来たんだ」と言って起き上がった。駐車場の方を見ると、タウンエースとコースターが並んで止まっている。その周りには、揃いの劇団やまびことロゴの入ったジャンバーを着た皆が集まっていた。国分寺から今回の公演に参加する、芸術劇場の研究生たちも来ている。
長岡はトラックを下りて簡単な挨拶をすませ、皆を見回した。舞台監督の浦部、音響の山本、それ以外のスタッフと小人四人以外役者全員が芸術劇場の人たちである。
皆は何となく落ち着きがない。やまびこのメンバーもそうだが芸術劇場のメンバーも、経験の無い人たちが多いせいかも知れない。
その時、搬入口の中から、鍵の開ける音がカチャカチャ聞こえた。
長岡が、「浦部時間だ!開くぞ」と言うと、搬入口を背にしていた浦部は振り向いた。
握り拳が震えているのが見えた。
浦部にとっての本番はこの舞台にある。立体の小屋からパネル類、ドロップ(間口十間の大きな布で出来た背景)、ぬいぐるみ、小道具と、全て自分で作り直した作品が使われる。それが今日と明日の二回だけ、二カ月間ほとんど休み無く、ギャラも無く、作った芸術である。
搬入口の開き扉が内側に、大きく折れるように広がる。光線のような陽射しが、闇の中をふわっと包むように、外と中の空間が一体となった。
扉の中から、会館小屋付きと言われる舞台のプロたちが五、六人出て来て、「どうぞ、時間です」と告げた。
浦部はトラックの運転席に乗り込み、バックで搬入口の奥までピタリと着ける。搬入を皆に任せ、会館専属の小屋付き技師たちと、打ち合わせのために裏から舞台を見回した。舞台から客席が広がる。広い、そして大きい。
浦部自身、この舞台は初めてではないのだが、自分がスタッフとして来るのではなく、舞台監督としての自分は、天と地ほどの違いがあった。
振るえる感情を抑えて、冷静に務める。
皆は、トラックから荷物を中に運び込む。アンプにミキサー、MDとコード箱、照明関係は会館の備品を使う。小道具と衣装箱は、縦横一間二間の木箱で十数個ある。ズラ(人形の頭、お面)は、布袋でやはり二十近くはある。これら道具類は女の子たちが担当している。音響機材は下手袖、後は楽屋前に運ぶ。
しかし、皆要領が分からないのか右往左往している。それを見た長岡は、打ち合わせをしている浦部に声を掛け、荷物仕分けを先にするように促した。
浦部はおどおどしながらも、皆の前で、
「まず女の子たちは、小道具と衣装とズラを直ぐに使える状態(分かりやすく)にしておいて。一人が二役三役やる人もいるから間違いないようにして下さい。音響のセッティングは大丈夫だね。照明は、小屋付きさんと動いて下さい。え~と、後は野郎が多いから。・・・・長岡は?」
「十一時ごろまでなら動けるよ」
「それじゃ、野郎は大道具の組み立てとドロップの取付けですね」
浦部は丸っこい体で、下手袖の綱元から上手奥に作る小人の小屋まで、広い舞台をコマネズミのように動いている。
津田はロビーで販売する物品やプログラムを、搬入口から長い廊下を何往復も運び、即席の売り場も作った。長岡は、舞台の方がある程度落ち着いて来たので、ロビーに出て来て窓口を作り、座席券の整理を始めた。
舞台では、照明の明かり合わせが最後まで続く。
明かり合わせは、サスバトン(照明機材)を下ろして手動で行う作業である。サスバトンが下りている間は舞台が使えないので、パネルや道具類、または役者の場ミリやリハーサルが出来ない。
開演は二時だが、一時間前には緞帳を下ろさなければならない。それまでには間に合いそうにもなかった。
転換稽古が出来ないので、浦部は役者と大道具スタッフを集め、各自台本を見ながらイメージトレーニングしておくように言った。
浦部はサスバトンが上がるのをジッと耐えながら待ち、時計を見た。少しでも時間が出来れば稽古するつもりである。それまで照明作業が終わるのを見ながら、本番中の事を考えていた。

続く。


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~今日の一言~

空間認知力ですか?なるほどですな。
棋力上達に当てはまりますね。

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長澤席主

Author:長澤席主
他人を思いやれてこそ自立
傲慢で配慮がないのは孤立

名言カレンダー10月号より

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